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The Galaxy Express 999

Dec 07,2008

わが町では雪は積もることなど10年に一度あるかどうか知れない。ただ、寒暖の差の体感についてはあくまでも主観的なものだ。だからやはり冬は寒い。

鉄郎の母「機械の体だったら寒さなんか気にしなくていいのにね」
鉄郎  「機械の体だったら、とっても長生きできるんだね」
鉄郎の母「そう、部品さえ気をつけて交換を続ければ永遠に生きられる」
鉄郎  「永遠に?」

劇場版「銀河鉄道999」より

今年の3月初めごろの、ある寒い朝だった。

スパナを手にしたわたしは、俺のオートバイW1S-Aと彼のオートバイW3-Aの前に立っていた。

それぞれに掛けたシートの後輪部分だけをちょっとだけメクって、ナンバープレートを取り外した。それから車検証を用意して陸運局に向かった。

グレイハウンド・ジムニーのステアリングを握っての道中、わたしはまだ判断がつけられず思索に耽った。

わたしは納税が厭になっていた。納税者の皆様がたに感謝します、とNASAはロケット打ち上げをするたびに言うが、日本の国土交通省はわたしに特に何も言ってはくれない。それから車検切れの車両の自動車税留保の術が用意されているわけもない。そこでどちらか一台を廃車にするつもりだった。納税は国民の義務だけど無駄は減らしたいのもこのご時世の人情である。

陸運局ではまず改造申請窓口を訪ねた。廃車の手続きをする前に、オートバイの改造についてアドバイスを請うつもりだった。カウンタの向こうにいた老人は、ラインの検査官に直接訊いてくれ、と面倒くさそうに言い放った。これで給料が出るのはさぞありがたいことだろう、民間だと重役待遇の職責の人でもなかなかそうはいかない。機械の体でも持っているのかも知れない。

わたしは知りたかった。オートバイのエンジンを積み替えるならエンジンに刻印されたエンジン番号が変わってしまうことになるが、申請すればよいものなのかどうか。もしもW1S-Aのブレーキをディスク式に変更したなら、改造申請する必要があるものなのかどうか。その回答次第で、どちらのオートバイを廃車するべきなのか決めようと思っていた。

検査ラインの詰め所で質問したい旨を伝えた。30分くらい待ってもらうことになりますが、と若くて感じの良い検査官が丁寧に答えてくれた。ああ、この人なら、民間でもじゅうぶん通用するだろう、とわたしは待つことが苦痛でなくなっていた。

彼が分厚いファイルを抱えてわたしの前にやってきた「W1E-14142をW1E-17320に積み替えるなら形式が同じだから何も申請する必要はないのですよ。一方ブレーキ形式を変更するということは強度計算などが必要でして・・・・以下省略」


95パーセントの成功率で、わたしの「俺のオートバイW1S-A」は海水に沈むも復活させることができると発言したことがある。残りの5パーセントは消費税だ、とも言った。

お買物しようと街まで出かけていざ財布の中身を見たら、消費税が不足していて買物を諦めるってこともある。

わたしは5%ぶんのドつぼスパイラルに陥っていた。人生いろんなことがある。

修理ぜんたいを見通す腕が未熟だったせいで、あの日わたしはW1S-AのW1Eの大切な部分を壊してしまった。何をどうしてしまったかについてはわたしの名誉にかけて言わない。墓場まで持っていくつもりだ。もしも修理に10万円以上費やしても良いことにするなら、むかし貰った練習用W1Eのタイミングギアケースを引っ張り出してきて、カムシャフトの軸受けメタルを新造してから組み直しても良いのかも知れないけど、そんな日がいつ来るか知れないし、時間はどんどん経ってわたしがオジイサンになって果てるほうが早くやってくるような気もするのだ。

ところで逆説を述べれば、10万円ほどプレゼントしてくれる人がいたなら、あっさりクチを割るということでもあるが、いかがだろうか。


わたしは陸運局の総合相談窓口で、W3-Aの廃車手続きを始めた。どちらかを選べと言われたら、やはりわたしはW1S-Aのほうが好きだ。決心した。W3-Aの腰下をW1S-Aに移植するのだ。


決心した、というわりにはぐずぐずと生きているうち夏を迎えてしまった。W3-Aのエンジンは、まだW3Fに抱えられている。わたしにはもうすこし様々なきっかけが必要だった。

そんな僕の生活の柄が夏向きなのでしょうか
寝たかと思うと寝たかと思うと またも冷気にからかわれて

生活の柄/高田渡

10年来ずっと、携帯電話はNTTドコモを使い続けてきていたわたしなのだが、ふとある時にわが家ではFOMAだと電波品質があまりよろしくないことが発覚した。あろうことかわがリビングでは圏外になってしまうといったことが何度もあったみたいだ。好む好まざるに関わらず、もはや社会人にとって信用問題に関わるデリケートな部分を担うようになってしまっている携帯電話だから、movaとFOMAを併用するデュアル回線契約なるものを強いられることになった。つまり家に戻ると端末の切替処理をしてmovaで待ち受けるというややこしい状態で二年くらい過ごしたというわけだ。

今度はそのmovaが規格として存在しなくなるという。そこでいろいろ検討した末、AUに変更することを選んだ。以前にネタにした、リュウド社の携帯電話用キーボードが使えなくなるのはちょっと勿体無い気がしないでもないけど、キャリアの変更に踏み切った。

AUを選択した理由は、回線品質のことだけではなく、新規端末価格が1円だとかいうのは当然のことだとして、やはり電話機の呼称が最終的な決め手となった。パナソニック製、東芝製、ソニーエリクソン製などなどいろんなのがあるわけだが、わたしにとってはそのうちのどれを選んでも楽しい。それで結局わたしは、ソニーに決めた。

つまり「WナントカS」っていう電話を手に入れたことになるわけだ。 三洋電機がもうちょっと頑張ってくれていたなら、W*SAってのも選択できたのかも知れないと思うとちょっと残念だ。

色はブルーメタリックを選んだ。なんだか嬉しい。もちろん電話番号は変わらない。

こうしてついにわたしのココロは少しずつダブルワンに向かい始めたのだ。


10月を迎えたある休日、W1S-Aを掃除してキャブとエキパイを外した。その次の休日には、W3-Aからもキャブとエキパイが取り去られ、次第に周囲が賑やかになってきた。(「俺はいつも俺」をご参照ください。)

秋は秋は浮浪者のままでは眠れない
秋は秋からは浮浪者のままでは 眠れない

生活の柄/高田渡

それから二週間後、ようやくW3Fからエンジンは降りた。エンジンが無いからといって、そうしたことでW3-Aを捨てるというわけではない。使わないのならW3の部品を譲ってくれ貸してくれをいう要望があってもわたしは無視するのでご留意いただきたい。きっと冷たく無視することを今から宣言しておく。(大げさに言ったら、リンゴ・スターの気持ちがちょっと分かるような心持ちがした、みたいな。先日ニュースで見た彼のコメントには笑った)

いつか10万円の提供を受けたら、本来の腰下に戻す日がきっとやってくる。そう信じながらタイムカプセルに一基のW1Eを沈めることにした。将来医学が発展したら、そのときには治療できるっていう冷凍保存系SFドラマを思い出す。「塩漬けダブワンよ、いつか甦れ!!」ってね。

復活を信じてミイラと生活している人たち(発覚するとお縄になるみたいだけど)も、こんな気持ちで熱心に活動しているのだろうね。いやあ世間にはいろんな人がいるものデス。


ここで進行性ダブル病「彼のオートバイ」シリーズはひとつ終焉を迎えることになった。わたしとしてはW1E系のエンジンについて勉強して、そこいらのバイク屋さんに頼らなくともなんとかして好調を維持する方法を学ぶ、という当初の目的は達成できたのかな、と思っている。それだけでもずいぶん幸せなことだった。

ありがとう、ダブルスリー。一つの旅が終わり、また新しい旅立ちが始まる。

さらば、ダブルスリー。

さらば少年の日よ。

さあ行くんだ その顔を上げて
新しい風に心を洗おう
古い夢は置いて行くがいい
ふたたび始まるドラマのために
あの人はもう想い出だけど
君を遠くで見つめている
The Galaxy Express 999
Will take you on a journey
A never ending journey
A journey to the stars

そうさ 君は気づいてしまった
安らぎよりも 素晴らしいものに
地平線に消える瞳には
いつしかまぶしい男の光り
あの人の目が うなずいていたよ
別れも愛のひとつだと
The Galaxy Express 999
Will take you on a journey
A never ending journey
A journey to the stars


The Galaxy Express 999 / Godiego

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