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ドント シンク トワイス

2000年10月21日

じつは去年の夏ごろから、悶々としていました。今日のネタはこのあたりのレポです。

トルク管理は重要です → トルクレンチを正しく使いましょう

↑ これは、たしかにその通りで、正しいことだと思います。ただ、それを成立させるためには、ある前提条件があります。

「健全なネジ山に、健全なネジをきっちりと締めこむ」

ただこれだけのことですが、新車のころから、ご自身あるいは信頼のおけるショップで整備やらオーバーホールした車両を除外すると、もしかすると困難なことなのかもしれません。

エンジン「W1E」のアタマ部分にあたるロッカーケース・カバーとフレーム「W3F」とを固定するのは、4本の長いボルトです。

以前に、近所の老舗オートバイ屋さんで聞いたお話によると、このボルトが曲者なのだそうで、サイドカーを引く車体、あるいは転倒車にあっては、フレームのしなりや歪みが、このボルトを経由してエンジンの腰上に影響を与えて、最悪の場合だと走行中に突然エンジンブローすることがあるそうです。

こわ〜。

わたしも、いつかはサイドカーという憧れを持っていますので、この長いボルトのコンディションについて、注意していきたいとは思っています。

わたしは、去年やった作業と同じように、その4本を緩めて抜き取りました。続けて、タペットホールカバーも、吸気側・排気側それぞれにある4本のロングナットを緩めて、取り外します。

W1Eのロッカーケースとシリンダヘッドは、アルミの鋳物。それら2つのパーツを固定させるのは、「焼きの入った」8本のボルトです。わたしは、去年と同様にボルトをすべて抜き取ることにしました。ただ、ひとつ違うことは、緩めたボルトの本数でした。

去年のあの日に遡ります。プッシュロッドをロッカーアームのお皿に入れて、そしてケースを締付け固定しようとしたときのことでした。

俺らはドラマー。スネアドラムをはじめ、タイコのチューニングの場合、ラグのキーは、対角に締め付けるのが基本です。

そして、わたしはこのオートバイのエンジン組み付けにあっても、その基本に忠実な作業を、いつもそうしているように進めました。そのとき、かつてW1クレイジーズさんの相談役さまに見せて頂いた「シリンダヘッドの修理依頼品」のことを思い出していました。

その修理品は、ネジ穴をナメてしまっていました。

「ここはアルミだからよぅ。じぶんでやッ時は、気をつけるんだぞォ〜。みぃんなコレだよぉ。」

相談役さまの言葉を思い出しながら、わたしは締め付けトルクを除々に強くしていきました。サービスマニュアル「SM-3」にあっては、このボルトの規定トルクは4kgとなっていました。

2.5 → 3.0 → 3.5 と 対角順にトルクをあげていったときでした。

バン

うげ〜。やっちまったい〜。どないしょ〜。

どうやらわたくし、ボルトをねじ切ったようでした。

シリンダヘッドのネジ山を壊したわけではないので一安心しましたが、SM-3さえ信じられなくなってしまったのが、あの日でした。

ただ、せっかく苦労して「はじめて」ロッカーケースを載せたばっかりだったので、「車検を取るまでは放置。もしオイルが漏れたら修理しよう」ということにしました。いったいどのアタリが、基本に忠実なんでしょう。

このボルトはネジ山に対して5mmほど、アタマを出して残っていました。ちょちょっとCRC5-56をスプレーしてから、露出部分をバイスプライヤで掴んで捻ると、あっさり緩んで抜けました。抜いたボルトを見ると、妙なところで分断されていることに気づきました。おそらく、ネジ山に対して底が付いたとき、更にトルクが加わって、断裂したものだと思われます。

ということは、正規の品質・サイズ以外のボルトが ここに使われていたということになります。うーむ、このW3-Aは 以前に誰かの手が入っているということなのでしょうか

とほほほ

それとも、メーカー部品の品質が 規定外だったのでしょうか

とほほほ

人間 自分を正当化するためには、いろんなコトをいうものです。でも、ウソは書いておりません。ともかく懸案だった抜き取り作業が、無事終了しましたので、悶々としていた気持ちからは、開放されました。

問題のネジ穴に、新しく用意した正規のボルトを挿入しようと試みたら、その途中に「引掛かり」ができていました。そこで断裂ボルトを調べると、ネジのピッチが微妙に不揃いでした。ボルトは伸びて切れていましたから。

タップを使って軽くネジ穴をさらうと、ネジ穴は復活したようです。 ここまでやったら ひとまずは安心です。やれやれ。

2000年10月22日

ん〜?妙なものを発見しました。

排気バルブのアウタースプリングに、コーヒー牛乳色のスライムがちょっとだけ、貼りついていたのです。

これはどうやら、はみ出した液体ガスケットのナレの果てかとも思いました。が、しか〜し!! 去年わたしが使った液体パッキンならば、グレー系の色のはずです。 なんでやねん〜 おっかしいなあ〜

去年見たときには、見落としたようですが、一抹の不安が、イヤな予感となって胸をしめつけはじめました。

しりこだまが、半分くらい体外に露出してきました。

この不安な気持ちを払拭するには、できる範囲で掃除・チェックをするしかないようです。

  1. オイルラインに、液体パッキンのカスが固着していないか?
  2. オイルが滞留しやすいところに、スラッジは残留していないか?
  3. ついでに燃焼室の状態は、どうなっているか調べる

テーマを箇条書きにすると、シンプルですが、結構な作業時間が必要です。

時計をみると、まだ午前9時過ぎでした。妻子はまだ寝ています。

うーん まずはシリンダヘッドを降ろすか〜。葛藤10秒。作業を開始しました。

シリンダヘッドを、シリンダに固定するボルトにかかっているトルクが なんだか へなちょこだなあ・・・などと思いながらも、合計9本を緩め、それから、キャブとエキパイを取り外しました。いよいよ、ピストンが顔を出す予定です。

シリンダヘッドは、液体パッキンがよ〜く粘着してくれていて、なかなか浮いてきませんでした。おそらく、ハンマーなどで叩くとフィンが欠けたりするのでしょう・・・気をつけないと、四国の若者に笑われてしまいますので、わたしはいつもより慎重でした。。

タバコを一服してから、えいとばかりに真上に引っ張りますと、ヘッドは外れました。

裏返してみると、こりゃスゴイ〜。カーボンまみれです。 右側の気筒は、特にカブり傾向だったようです。左側はまだマシだったようで、キツネ色の焼けを、はっきりと見受けることができました。

シリンダヘッドを安全な場所に確保してから、ピストンあるいはシリンダの状態を見ようとしました。

げげ。とほほほほほ。

へなへなと わたしはその場に座り込んでしまいました。

わたしは、しりこだまを抜かれた名無しの男になっていました。つまり、うちのW3は、最低一度はエンジンの修理を受けた跡があるということです。シリンダは、間違いなく1回ボーリングされていますから。W1Eのシリンダブロックは、スリーブを持たない構造になっていますので、あと・・・ああ恐ろしい〜。

そして、堆積カーボンの量が、燃焼室とピストンとで、一致していないようです。 前に、このエンジンを開けた人は、いったいどのような妥協点で、このような作業をなさったのでしょうか。わたしはこのW3にとって3人目のオーナーなのです。かつての修理履歴や背景を知ることは、もはや困難でしょう。

先代のオーナー 「I原さん」は、この件について何もおっしゃっていませんでした。そして、わたしにウソを言う必要もなかったはずです。「譲渡の際、金銭がからまなかった車両」ですから。これは明確です。

タダで貰ったものに、文句を言ってはいけません。 まあ、ボアアップ車だと思って笑い飛ばしましょう〜。 えーっと、これで何ccの排気量になるんでしたっけか・・・(計算面倒)

ふう。

自分で濾れたコーヒーを飲みながら、タバコを3本くらい吸うと、だいぶ気力が戻ってきました。

「ああ よかった貰いモノで〜。」

高いカネ払って、とかローン支払い中だったらブチ切れていたかもしれませぬ。こうしたこともまた、開明獣に報告することにします。開明獣については、拙サイト内コラム「彼女は鳥」をご参照ください。

さて、シリンダとピストンは、ヘッドまわりの作業を優先するため、ウエスと買い物袋で養生しました。しばらくこのまま放置です。それからシリンダヘッドをチェックしていきましたが、よくもこんな状態で、圧縮あるいは爆発してくれていたもんやな〜!!と、機械相手に、ツッコミたくなるくらい、バルブ・ポートの状態はダメでした。カーボンの堆積のせいで、吸気側は少しマシでしたが、バルブはキッチリとは閉じていなかったはずです。

燃焼室およびバルブをお掃除します。そのためには、バルブまわりを分解しないとなりませぬが、専用工具のバルブスプリング・コンプレッサなど、わたしは持っていません。そこで、以前に師匠先生から教わった「プラグレンチでドツく」作戦を実行しました。

プラグレンチでドツくと、コッターピンが外れます。そうしたらスプリングとバルブを取り外すことができるわけですが、とりわけ排気側のバルブを抜き取るのには、ずいぶん苦労しました。CRC5-56やら剥離剤やらを塗布してカーボンを溶かして抜くことを試みましたが、取り外しにあたって、まだ引っ掛かりがあって抜くことができません。強引に引き抜こうもんなら、バルブガイドの内壁に引っ掻き傷を作ってしまうことにもなりかねません。そこで、借り物のダイヤモンドヤスリで、バルブシャフトの表面をさらってやると、ようやく抜くことができました。

そ〜っとバルブガイドの中を覗いてみました。世界が見えました。(ウソです)

極細のスクレイバーとツマヨウジ、それから娘の使用済「ドキンちゃん」キャラクター付き歯ブラシなどで、燃焼室や排気ポートのお掃除をしていますと、急にムラムラとしてきました。

「しんえもん〜 ブラストさせてくれ〜」

携帯電話で連絡を取ってみました。現在彼は外出中で、あと2時間したら家に戻る予定だ、とのことでした。それだけ時間の空きがあれば、かなり分解できるぞ。わたしはロッカーケース内部のアームやらバルブスプリングやらその他を、灯油を入れた器に沈めました。

ごめんよっ 

ってな具合で、わたしは「ペダン星人」に変身して、しんえもんさんちに乱入しました。

「おいおいおい なにを持ってきたんや〜 なにをするんや〜」

彼は、わたしが両手に持っている二つの物体を見て、不思議がりましたので、わたしはいちおう答えました。

「ああ これはやね。これとこれが空を飛んで、神戸のあたりで合体すんねん〜。キングジョーの超合金やねん〜」

「"ウルトラ警備隊西へ"かいな〜。そんなわけねえだろ!」 

シリンダヘッドは、見ただけでおおよそ見当はつくでしょうが、OHVエンジンのロッカーケースカバーは、ちょっとわかりにくいでしょうね。

こうして彼の職場で、コンプレッサを拝借することになりました。全体を軽くエアブローして、まずは水分を除去。それからマスキングする面をシリコンオフで脱脂したあと、テープを駆使してフタをしました。

さてブラストです。わたしは、とりあえず初めて使う「ガーネットサンド80番」の威力にビビりました。なんせ、インチキキャビネットの中が一瞬で見えなくなりましたし、砂煙のなか、ときおり火花が出ていました。おそるべき切削能力です。

ただ、これだけの処理状態では表面が粗すぎて、白い粉が噴いてきたり、オイル染みの原因となったりするのでしょう。

2000年10月22日

本日は、メディアをガラスビーズに交換しまして、再びしんえもんさんの職場に乱入しました。一時間ほど戦うと、かなりキレイになりました。もっと続けて作業したら、テラテラに輝くようになるのか・・・と、想像を膨らませましたが、あんまりピカピカなのも、全体の見映えバランスを悪くしそうなので、ほどほどのところで止めました。

マスキングを剥がしてみると、多少のガラスビーズが内部に入っていました。ここでもういちど、灯油にドブ漬けした後でエアブローしてやりますと、何の問題も無い状態に戻ったようです。そして、なんてったってオドロキなのは、アルミ地肌の油シミが全てクリーンアップされていたことでした。

今度は、ついにやっと、バルブ関連のお掃除です。

ところで(←いきなりかい!)わたしは、自分の歯には自信がありません。30歳台も半ばを過ぎたこともあって、わたしの前歯がスキっ歯になっております。カスタードプリンを、ヒト匙ほど口にほおりこんでから、舌で圧をかけますと、ニョニョ・・・バキ! いててて

すいません。下品でした。

え〜っと、ちょっと実験してみようと思い立ちました。バルブをまだ掃除していない状態で、全てのバルブを仮に差し込んで全閉状態にしました。そしてポート側からCRC5-56を吹きかけました。すると、タラ〜リという感じでCRCは液状になって流出してきました。わたしの前歯よりもスキっ歯のようです。やれやれ。

バルブとバルブシートの当たり面をよーく見ると、カーボンとスラッジとサビがヴィヴィッドにアウフヘーヴェン(←コレばっかし)された結果と思われる、虫食いが発生していました。これが圧縮モレ、ついてはCRC漏れの原因なのでしょう。

では、バルブのメンテナンスということで、カーボン落としからやっていきます。 ウチには、旋盤やボール盤はありませんが、万力とハンドドリルならありますので、ハンドドリルを万力にセットしました。それから、ドリルのチャックに、バルブをセットしまして、スイッチオンー。

うおおおお〜。モトメンテナンス誌の記事みたいです〜。かっちょええ〜。

自分に酔いながらも、以前に師匠先生から貰った、糸ノコの歯から削り出した刃物を使って、シャフトから傘あたりに付着したカーボンを掻き落しました。ただし、バルブシートとの当たり面に相当する所については、あまり強く掃除しませんでした。われながら、なかなかのもんです。

バルブシャフトの掃除が、おおむね終わりましたので、吸気・排気それぞれの掃除済バルブを、バルブガイドに入れてみました。ちょうど半分くらい差し込んだところで、アタマを振って、シャフトとガイドの隙間があるかどうかをチェックする作業をやります。

排気側の両方が、ほんの微妙な感じですがカタカタと音をたてました。うーん。バルブガイドを交換するべきなのかなあ、どうしようかなあ・・・悩ましい状態です。

聞いたところによりますと、W1Eの場合、バルブガイドの材質は、あえてやや柔らかめの材料を採用しているそうです。オイル上がりや焼付きを嫌っての「長く使うためにはオーバーホールが前提」という設計品質なのだそうです。現代のアッセンブリー交換あるいは新車買い替え喚起などのことを考えれば、まだずいぶんマシなことで、まあこれもしかたないですよね。

2000年10月23日

さあ、続いては「擦りあわせ」です。

ばらしたバルブの左右を、きちんと憶えておいて、元通りの配置で擦り合わせる必要があります。そこで、右はピンク・左はムラサキの油性マジックでマークしました。

吸気バルブと排気バルブの大きさは全然違いますんで、こちらは意識しなくても、だいじょうぶでしょう。ちなみに、左が「擦り合わせ前の吸気バルブ」右は「軽く擦り合わせた時点の排気バルブ」です。

わたしは、バルブとガイドの両方を、エンジンオイルでしっかり湿らせてから、バルブをガイドに挿入しました。電話帳の古いのを下敷きにして、4つのバルブをひとつずつ処理していきます。バルブの外周に、うっすらとバルブコンパウンドを塗って・・・タコ棒にエンジンオイルを塗って・・・

ペタ。

タコ棒がバルブに吸いつきました。せーの、っとばかりに両手で棒を回転させます。 太古の火起しみたいな作業ですね。

いまさら考えこんでみたって もう手遅れよ
いまさら考えこんでみたって わかりっこないわ


ドント シンク トワイス / 友部正人

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