− 進行性W病 縁起由来 −

UPDATE: 2000/04/21

一昨日、妻と娘を連れて、岡山県の中央あたりの位置的にある「吉備高原」方面に出かけました。小雨が降っていました。

その日の目的地は、国道429号線沿いの、ある駐車場付近。そこには、ほんとに大きな大きな桜の木が一本あって、ちょうどこの時期はダムの湖畔を彩るのです。

わたしたちは、その駐車場に車を停めました。国道と言っても、田舎の3桁ともなるとその例に違わず、センターラインもなければ、歩道も無いような場所です。昼間は案外交通量も多く、ブラインドの緩いカーブがあります。歩行者には危険であると判断したので、妻子をジムニーに待たせることにして、わたしだけ駐車場から南に50mほど歩いて、ブラインド・カーブの奥に進みました。

「なんで あんたは こんなとこで 逝っちまったんだよ〜。」

ここにくるのは、ヤツが荼毘に付された日の晩以来のことでした。ここに来たり、通り過ぎたりするのがなんとなく嫌で、すっかりそれっきりになっていました。30歳台も半ばに入ってからのこうした事件は、かなりショックが大きく、キツく身に応えました。

特にどうって言うことのないブラインドコーナーでした。制限速度(30km/h)で走るのならば、すれちがう乗用車同士が、安全に離合できる程度の道幅があるところです。

あと1秒。せめてもう1秒、どちらかが先に通過していれば何も問題が無かったかも知れません。しかし、もはや「もしも・・・」ということを想像したところで、まったく意味はありません。彼はもういないのです。

ヤツとわたしとは 16歳の頃からの友人でした。わたしや他の友人たちの影響もあって、彼も19歳のころ、当時はあんまり人気がなかったSR400を解体屋で手に入れて乗ったりしていました。あと、わたしがちょっとの期間だけ乗っていたKDX200Rの前オーナーが、彼でした。わたしがTS200Rで、それからヤツがKDXで、剣山スーパー林道にて壮絶なバトルを繰り広げた記憶が、今でもつい最近の出来事のように思い出されます。

ヤツのほうが、わたしより2年はやく結婚しました。それからそれぞれに子供が生まれて忙しくなり、なんとなくお互いに疎遠になっていました。わたしが知らないうちに、ヤツは教習所で大型を取得していました。オートバイも、わたしはよく知らない車種ですが、黒っぽい2ツ目ネイキッドのトライアンフ3気筒に乗っていたそうです。

やや下り勾配の直線を過ぎた後の、緩い左ブラインドコーナーで、その事故に遭遇する直前に、ヤツは何を思い、何をしていたのでしょうか。もちろん想像の域を超えることはありませんが、もしかして、その大きな満開の桜に見とれていたのかも知れません。

報道によると、転倒したオートバイを対向車が轢いたことになっていました。目撃者がいないことも災いして、ヤツのほうが一方的に悪いという風評もありましたが、わたしが何人かの友人たちといっしょに、去年のあの夜に見た、当事者同士のタイヤ痕・スリップ痕跡を考察した限り、双方が、なにか他のものに注意を取られていたのではないかと思います。トラック運転手がわの当事者が、業務上過失致死などで送検されたというような話を聞かないことが、実に無念です。

彼はじつに運が悪かったようです。暴走やら酒気帯び運転やらをしても死なない、といった強運の持ち主も、世に多くいます。わたしも含めて、事故の当事者になっていないのは、運転技術が優れているのではなく、たまたま運が悪くないだけなのかも知れません。だから運を逃がさないように、謙虚なスタンスで、安全の確保をしながら乗りつづけていきたいものだと思います。ずっと一緒に走りつづけるための努力というのは、そんな些細なことの積み重ねなんでしょう。

ヤツは、お酒が飲めない体質の人でした。タバコはわたしと同じくハイライトを好んで吸っていました。生前にヤツがいつもそうしていたように、独特のやり方で封を切ったハイライトを、おそらくご家族が活けたと思われる花の中に、手向けて来ました。そのくらいのことしか、ヤツにしてあげられることが、わたしには無くなってしまいました。

「俺は おまえさんが好きだったよ。」

そう呟いてジムニーに戻り、雨に濡れた身体を暖めました。去年のあの日と同じく、花冷えのする土曜日でした。

ヤツが荼毘にふされたあの夜、何かしていないと気が済まない、そんな気持ちになって、わたしはパソコンに向かいました。「俺は、いつまでもW1S-Aとずっと一緒に走りつづけるんだ!」そんな気持ちをコンセプトにして、サイトのトップページを作り始めたのです・・・。


ご閲覧ありがとうございます。これが、わたしのサイト「進行性W病」の起源です。拙サイトを、「全てのライダーに捧げる」というのは、かなり大仰ですが、せめてオートバイ事故で命を失ったり、奪ったりすることがないように、という祈りも込めて、これからも維持していきます。

そして みなさん! いつもありがとうございます。またweb上でお会いしましょう。たまには一緒にコーヒーを飲んだり、飯を食ったりしながら、幸せなバイク乗りとして、夢をアツく語りあいましょう。


進行性W病 www.w1-3.com 1999-2009
i_irie@po.harenet.ne.jp

Valid XHTML 1.1!Valid CSS!