どういうわけか、ウチのお袋は、昔っから庭先をちょっと耕しては、いろんな植物を植えてしまうのです。しかも、ごちゃごちゃに植えてしまいますし、土を休ませることなんて一切やらないもんだから、土も植物もけっこうかわいそうだよな、と思ったりもします。
永久に連鎖する連作を繰り返すということ・・・つまりそれはちょうど、暖気せずにいきなりフルスロットルをぶちかますわりには、廃車になるまで一度もオイル交換をすることなどないというのと同じでオバチャン特有の行動原理なのかも知れません。
そんなもんだから、よほど興味を持って観察しない限り、庭先に生えている植物が、植えているものか雑草なのか、ちゃんと育てる気があってそこにあるのかどうかということについて、わたしにはぜんぜん判断がつきません。そのせいで草むしりをするたび、わたしとお袋の親子喧嘩が勃発するというのが、お決まりだったりしております。
21世紀最初の夏は、ぜんぜん雨が降らない日がしばらく続きましたよね。
毎日の夕方には、水やりということで、ホースでドブドブと 妻がしかたなくやることになっているのは暗黙のことだったわけなのですが、ある日には ほんの些細な気の迷いから、わたしが水やりをやってみました。
庭先では、雑草とトマトのほぼ原生林の裏に 青シソの森があって、その横には ニガウリとナスの苗が弱々しく生えていました。
そしてその横には、4株の唐辛子が 青々と、そしてぴんと空に向いて結実していました。
庭に唐辛子を植えたという話は、聞いていなかったし、過去10年間に 同様の実績があったという記憶も無いので、そのことを お袋に確認してみたところ、「ピーマンの苗を植えたつもりが、別のものが生えてきたから放置している。要るんだったら勝手に食べなはれ」と答えやがりました。なんとイイ加減かつ 飽きっぽいおかたなんだろう!でも、このまま放っておくと、良い鷹の爪ができるなあ・・・・
呆れつつも 少し喜んだそのとき、わたしのアタマに、ある別の事が浮かびはじめました。
こいつとフェデリーニで「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ」を作ったら、うまいやろな〜
と、遠くイタリアの晩夏を思い浮かべようとしましたが、そこに行ったこともなければイタリア映画や文化に造詣が深いわけでもないので、なんのイメージさえも湧きあがることはありません・・・・。
仕方が無いので「かつて利用したことがある範囲で 鷹の爪を利用した料理を出す店」を、味の記憶の中から引っ張り出すことを試みてみました。
ああ、国道32号線から満濃町方面に入って、かの「満濃さぬきウドン・トライアングル」を更に僅か南下したとき、進行方向右にあるあの店の唐辛子は・・・・・
真っ赤で、よく乾燥した鷹の爪を、おそらくは手でバリバリとむしるようにして砕いたものが、ちっちゃい瓶に入れてあって、やや〜ほんの僅か太目に打たれてあるうどんに、醤油と鷹の爪を絡めて食わせてくれるあの店のことが、まずアタマに浮かび上がりました。
「ああ 真っ赤な物体入りの ちょっと太めな あの醤油うどんが食いたいよ〜でも、これから出かけるわけにもいかないので、わたしは そのウドンを食った気になって、ついでにその店のドアを開けたつもりで、さらにイメージというか瞑想に耽りました。
店の駐車場からクルマを出して、先程の道に戻り・・・そこを右に曲がる・・・・・
つまり、さらに南に進んでほとんど愛媛との県境付近まで進みました。
空想とは まったく勝手で 都合のよろしいものです。
あっという間に、その県境付近の集落にある橋を渡り、クルマを停めました。
わたしが何処に到着して、何を目論んでいるのかということについて、さぬきうどんに造詣の深いかたには、もうバレバレのはずだと思います。
そうです。
そうなんです。
冷たいか熱いか、1玉か2玉か 玉子は入れるか入れないか という3つの選択要素しか無い、かの有名なお店での「味の記憶」について、わたしは遡ろうとしているのでした。
(選択肢には、もうヒトツ うどん or そば というのが季節によっては存在している)
このお店では、先程の選択肢から選んだモノに
を好きなだけトッピングして、かっ食らわせてくれるシステムになっていまして、ダシ汁とかは存在していません。
そして その味たるや、ヤム・ウンセンに プリックナンプラーをかけたものを彷彿とさせるモノだと表現すれば、わかりやすいようできっとたぶんピンボケでしょう。
おそらくは、あの青唐辛子味噌というか 青唐辛子の漬物が自宅の冷蔵庫にストックされるのならば、空想の世界ではなく、いつだってあの橋のたもとに行っているのと ほぼ同じ味を楽しむことができるでしょう。わたしは勝手にそう決めました。
わたしのプチ・チャレンジの始まりです。
さっそく、20本ばかりを青い状態で収穫してみました。よく水洗いしてから、アバウトながら小口切りに刻むと、すでに鼻腔をツンと刺激する素晴らしい世界が出現しました。
さて、ここからが問題というか イマジネーションの世界になります。 あの味の記憶から考察した範囲では、何をどのような配合で この唐辛子に加えているのかが あまり明確ではありません。
でも、このままではしょうがないので、自然海塩を少々まぶしてから器に移し、酢を振りかける程度で、今日のところは堪忍しといたることにしてみました。
それから容器を密閉し、待つこと5日間・・・・・・
その日のわたしは、ちょうど誰のオートバイ号=W1S-A=のバラバラにしたエンジンに、ガラスビーズブラストを打ったばかりでした。お風呂に入ってゴシゴシやったところで、そう簡単には落としきれない汚れが爪の間やら皮膚に打ち込まれているはずなので、今日の試食は市販品でやってみましょう。やっぱし、ガラスビーズやアルミ粉塵を練り込んだ手打ちうどんなんて、食いたくありませんから。
大量にお湯を沸かし、冷凍生うどんを5個、放り込んでみました。いつもの通りで、冷凍生うどんの包装に記載されてある「おいしい作り方」は当然のように無視しています。
お湯が再び沸騰するころ、吹きこぼれが起こらない程度に火力を緩めてやります。対流するお湯に流れていくうどんが、まんべんなく、やや太くなってきたなあ というところで、ザルに打ち上げることになりますが、たぶん時間にして5分間は茹でることになるでしょう。レシピに書いてある「1分煮て、麺がほぐれたら出来上がり〜」というのは、個人的には納得がいきません。せっかく高いお金を払って 冷凍生ウドンを買っているのですから、エエ感じに戻してやりたいものです。
そして氷水で締めると、うどんの準備はOKです。
では、いってみましょ〜♪
□ 材料 □ (分量は いちおうヒトリ分です)
うどん 1玉
刻んだ青葱 大さじ1〜2杯
濃口醤油 大さじ1杯
酢(穀物酢) 小さじ1杯
青唐辛子(調理済) 小さじ1杯
□ 作り方 □
(1)うどんを どんぶりに入れる
(2)ネギをかける
(3)醤油をかける
(4)酢をかける
(5)青唐辛子をかける
(6)かき混ぜて完成!
うどんを食ったあとの、どんぶりの底に僅か残る「醤油+酢+葱+青唐辛子の種」を舐めるとこれがまた妙にうまい〜♪という、オトナ向けのシンプルなレシピなのであります。
ずずっとススりこむと、これがうまいうまい〜。
酸っぱさと辛さが ビビッドなアウフヘーベンを醸していることで、食が進む進む♪
妻とふたりで 5玉の冷凍生うどんを秒殺した瞬間、わたしたちはあの名店の「なんちゃってレプリカ」が、自分ちでも作成できることを、確認しました。嬉しい〜。
でも娘には、この味を体験させるわけにはいかないのが少し残念です・・・。
もはや人体実験の領域は脱出しました。今度近いうちに、3.1画伯&エロ助にも食わせたろ〜と思います。
庭先に半ば自生している唐辛子は 残る全部を青いまま収穫してしまおうということになりました。貯蔵在庫が多いことに こしたことはありませんし。
ザルを持って、庭先に出ました。
すこしだけですが、唐辛子の実は、まっ赤に色付いているものもありました。晩夏ですが、陽射しというのは、まだまだ強烈なものです。ほんの5日の間で、どんどん唐辛子は熟れていました。
できるだけ緑が残っているものばかりを摘んで、同じように調理してみました。
もちろん前回漬け込んだぶんは、ほとんど残っているのですが、あの味を知ってしまった以上、どんどん貯蔵しないと、あっという間に消費しきってしまうでしょう。
それから5日して、第二弾を味見しましたが、少し赤みを帯びている部分では、辛さのタイプが少しだけ違っていました。ツンというかギンと感じさせる風味は、いくぶん陰をひそめ、ジワっとくる辛さが立っているようです。
それならば、真っ赤になっているけれど、まだ乾燥していないものを選って、同様に調理したら今度はどうなるのか ということに、興味はどんどんシフトしつつあります・・・・・・・。
4株の唐辛子の実は、すでに乾燥し始めているものだけが わずかに残っているという状態になりました。庭先では、すでに来年に向けた種採りの準備開始〜です。
次の春に、まだ拙サイト「進行性W病」が継続されているならば、まず間違いなく「唐辛子発育記」的コラムが とりとめなく展開されることでしょう〜♪