メニューをスキップ


=再評価=

Dec 23,2008

きっかけは、立川志らく師匠が著した「シネマ徒然草」という書籍の「大林映画は三十路を超えてから」というタイトルのコラムだった。

志らく師の言葉を引用する。

当時は子供だった所為でその素晴らしさを理解できなかった。一連の大林作品は大人の目から見た青春ファンタジーで、その当事者にはあまりにも現実離れしていてついていけなかった。だが、三十路を超えて鑑賞てみるとどれもよく分かるのだ。

この影響を受けたわたしは、大林映画「彼のオートバイ、彼女の島」を久しぶりに鑑賞した。青春ファンタジーとして良い映画なんだなあとしみじみ再認識することになった。


今年もまた師走を迎えた。験かつぎも大切だから行き届かないところもあるだろうけど下手くそながらも一応は大掃除をすることになる。いっぽうでその気合いを腰砕けにするのが次女。今は4歳になる下の娘。親のココロに余裕があるときにはこれほど可愛くてしょうがないものは無いと思っているけど、そうじゃないときにはこれほど恐ろしい存在はない。

だから昨年末には大掃除の妨害工作に忙しくて騒がしい娘達に「となりのトトロ」をあてがうことにした。われわれ親達だけでもせめて大掃除に集中しようじゃないか、という算段だった。横着な親と罵られることにはあえて甘んじよう、そのくらい状況は逼迫していた。で、近所のツタヤに出向くとビデオが無かった。借り出されて在庫が無いということではなくて、どうやらDVDしか扱いがないみたいだ。GEOにも行ってみた。同様だった。

しまった。この数年で世の中は変わっているみたいだ。25年前だったらレンタル屋さんには同じタイトルでベータとVHSがペアになって陳列されていたものだった。あれと同じで、ちょっと前まではVHSとDVDがセットされて棚にあった筈だ。わたしは既視感のなかで、しばし浦島太郎の気分を味わった。

世の中ではブルーレイが他方のナントカを駆逐するとかしたとかっていうニュースが駆け巡っているころ、わたしは家電量販店の売場のまえでひとり葛藤していた。DVDプレイヤーなるものがそれほど高価なものではないこともその時知った。しかしながら、たかだか五千円の支払いに躊躇していた。何が悪い。だいたいそんなにテレビ見ないし。

ま、こんなきっかけでもなけりゃ、当分DVDプレイヤーなんぞ欲しくならないか、と覚悟を決めた。よく考えたら、液晶プロジェクタとスクリーンを持っていてDVDプレイヤを持っていないほうが、現象としては特異なのかも知れない。

電器屋からのその帰り道にDVD判の「となりのトトロ」をレンタルした。会員証の更新とかで何年かぶりに手数料も取られるハメになってしまった。ちっちっち。大掃除にこの出費は痛いぜ、ちっちっち。


あの日から一年が経過した。DVDプレイヤーのモトは取れたかも知れない。かなり酷使したぞ。

やはり機械を手に入れたら使いたくなるのは人情というものであって後日わたしは志らく師匠が著書のなかで絶賛した大林映画を、その発表順に沿って借りてみることにした。つまり「HOUSE」とか「瞳の中の訪問者」このあたりから順を追うわけだ。旧作レンタルだと7泊8日で5本が1050円のサービスがある。利用しない手はない。

このときは、もしかしたら大林映画だけでは体質に合わない畏れがあるという危惧があった。5本ぜんぶを大林にしないで「サイドカーに犬」って映画も混ぜた。新しいことを生活習慣に加えるには、リスクマネジメントくらい必要だ。

へえ、「サイドカーに犬」では、二種類のサイドカーが走っていた。トライアンフのシルバージュビリー。それからW1S-A。ダブワン映画と思わずに借りてきたDVD。映画自体はそれほどの印象も残らなかったけど。W1S-Aに青のメッキタンク。サイドカーには明るくないから船がなんだかよくわからない。申し訳ないね。

それらを返却しに行った際、レンタル屋の謀略にまんまとハマって次の5本を家に持って帰ってしまうことになった。このときは「ねらわれた学園」「廃市」と一緒に「スローなブギにしてくれ」などを貸りた。どれも古い映画だ。そういえば、そのどれもまだ一度も観たことがない。

「スローなブギにしてくれ」は想像どおり片岡式に破綻した内容で、なかなか面白かった。あくまでも「片岡」としてだけど。ああ、赤いスーパーホーク3がいい感じ。やっぱしバイク映画だったのか。ああ、浅野温子さんキレイやったし。

いやそんなことを言っている場合ではない、優先順位は大林映画だ。 大林映画を勝手に再評価するのだ。

そんなことを言いながら、この頃にはすっかり大林モノにココロが順応していたことに気付いた。そう、ハマった、というやつだ。

その一方で、あの頃乱発されていた角川映画もついでに再評価してみたくなっていた。薬師丸ひろことか渡辺典子のものとか。

そうしているうち、やがてついに「彼のオートバイ、彼女の島」をレンタルする順番が来た。心意気のB級映画、だと言い張る大林監督の巻末コメントってのも見たかったし、別の意味で興味津々だった。

今までに何度も何度もホームビデオで見ていた映画なのに、DVDで観て初めて気付いたことがあった。三浦友和のW1Sは、ずっと黒塗装だとわたしは思い込んでいたが、それは間違いだった。キャンディレッドだ。なんとも情けないことだ。

それからチャプターに誤植があるのを見つけた。サイクルセンターで三浦友和のW1Sに原田きわこが乗るシーン。キャプションには「W1SA」と書いてあった。まあそれはどうだっていいか。

同じときに貸りて観た「メインテーマ」の出演者紹介チャプタでは、野村宏伸のデビュー作は大林監督「彼のオートバイ、彼女の島」って書いてあった。こちらもどうだっていい。

さあて、三浦友和のW1Sはキャンディレッドだ。こりゃ参ったぞ。拙サイト内のコラムにも何箇所か影響が出るだろうと思った。早く訂正しなきゃ。

焦る気持ちで一杯なのであるが、大林映画、今観ると面白い。

『時をかける少女』はテレビで観たことがあった。筒井康隆ファンのわたしとしては、なんじゃそりゃ、と思ったものだけど、今なら「それも、マ、ありかな」なんてことだってたくさんあった。

『あした』はレンタル対応のDVD化が未だされていない。以前にWOWOWで観たことがあったが、今回企てた、時系列に沿って一気に観るぞプランの一環として、市立図書館のレーザーディスクで鑑賞してみた。

志らく師匠の「大林映画は三十路を超えてから」って言葉に、わたしの誤っていた認識は掬い上げられた。どれもこれも良いのだ。驚くことしきりなのだ。

わたしが三十路を超えたあとで新しく発表された映画も、DVD化されてあるものは全部見た。出色は『風の歌が聴きたい』。聾唖のトライアスロン競技者の話だ。その主人公の父親役を演じる石橋蓮司さんがとにかく凄い。それから『なごり雪』にもやられた。正直申し上げて、フォークグループ「かぐや姫」には何の思い入れのないわたしが、ベンガルさんの演技というフィルタを通すのなら、あの歌に掻き毟られるような気持ちを持つに至った。

えい。勝手にランクをつけちゃる。 何度も観たもの、初めて観たものをガラガラ・ポンしてみよう。でも順位はつけにくいのでグループ分けしてみた。

こりゃすげえや

  • あした
  • 風の歌が聴きたい
  • なごり雪

次点は

  • 日本殉情伝 おかしなふたり ものくるおしきひとびとの群
  • ふたり

このあたりから私見は偏りはじめる

  • 三毛猫ホームズの黄昏ホテル
  • 転校生-さよならあなた
  • 彼のオートバイ、彼女の島

お勧めします

  • はるか、ノスタルジィ
  • 青春デンデケデケデケ
  • 理由
  • HOUSE
  • 廃市
  • 野ゆき山ゆき海べゆき
  • 異人たちとの夏

わたしは好きですよ

  • 瞳の中の訪問者
  • 金田一耕助の冒険
  • 転校生

世間とわたしの評価にズレがあるのかな

  • 水の旅人-侍KIDS
  • 時をかける少女
  • さびしんぼう

今生ではもう一度見ることは無いかも

  • ねらわれた学園
  • 天国にいちばん近い島
  • 北京的西瓜
  • 女ざかり
  • 三毛猫ホームズの推理
  • あの、夏の日〜とんでろ じいちゃん
  • 22才の別れ Lycoris葉見ず花見ず物語

手に入っていない映画「SADA」や「漂流教室」とかを観たら、多少変動するかもしれん。それから今年の新作『その日の前に』は、ぜったいにスクリーンで観ようと決めていたのに、岡山県では今のところ上映館が無い。なんてこった。残念だ。

わたしごときの映画論をくどくど書いても仕方がないけど志らく師匠がおっしゃるとおりで、大林映画って良い。大林作品を再認識する機会を持つことができる幸せを感じた。ちなみに映画「彼のオートバイ、彼女の島」は、大音量で観るとかなり良いのだ。なにせファンタジーだからな。

ようし今度は、師匠お勧めの「シベリア超特急シリーズ」に挑戦だっ!!いやいやその前に、W1Sは赤だってことを訂正するべき箇所を捜し当てなけりゃなりませぬ。

こうして、面白い邦画を積極的にDVDで観ようと決めたのです。良いのがあったら教えてください。紹介してください。

ちなみに2008年度だと新作DVDのマイ・フェイバリットは「家鴨と鴨のコインロッカー」と「歓喜の歌」。どちらも原作の小説や新作落語を知ったうえで観たけれどじつに見事。その一方でダメだったのも多数。原作モノは、ハズすとものすごく危険。お金を湯水の如く突っ込んだ縮小再生産に陥ったのでしょうか。


面白かったかどうかは別にして、映画を鑑賞したという記憶をなんとかとどめておく手だてを考えてみた。ふとブログの形をとってみるのはどうだろうかと思いついた。世の中にはホントにど〜だっていいようなブログがうようよと存在しているし、その中にひっそりとわたしのニューロンが潜んでいたとしてもたいした問題ではなかろう。そこで長屋に整理棚を一個増やして、martin氏によるppBlogを格納してみた。それからちょっとだけカスタマイズした。せっかくだから活字中毒傾向にあるわたしの読書歴も書き残しておいてみようと思っている。

タイトルは例によって駄洒落だ。文豪「中島らも」のギャグも拝借して織り込むことにした。外が見たいわけではなく、空を眺めたいわけでもない。わたしは字とかスクリーンを見つめていたい気持ちを込めてみた。(兵庫県の一部エリアの皆様、すいません)

↑先頭へ


進行性W病 www.w1-3.com 1999-2021
i_irie@po.harenet.ne.jp