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= IRIES in Shiraishi IsLand 2001 =

今年の僕ら家族は、TB2で島にやってきた。TB2を走らせる道なんて、この島にほとんど無いことなんかは、わかりきっている。それなのにわざわざクルマで来たわけは、TB2本来の原動機付物置の機能を活用するためだった。だから、TB2の屋根の雨トイに取り付けたキャリアには、ほんとうに久しぶりなのだけれど、カヤックを3艘、縛りつけた。ほかには、簡単な着替えと適当な食材、テントと寝袋、そして我が友650RS改(ヘン)・・・など移動式物置は満載だ。

そして3.1画伯は、キャプテン・ハゲポン夫妻たちと共に、例のゴージャスなプレジャーボートで、僕たちよりも、約1時間くらい先に現地入りしていた。

「ばーちゃん ことしも お世話になります〜」

僕は、ギンギンに冷えた漢字ビールとワイン、ジンジャーエールにコークを、クーラー・ボックスに仕込んでいた。このボックスは、外側が緑色にペイントされたの鉄板で巻かれていて、80リットルの容積があるものだ。ずいぶん昔から使っているものなので、全面がミドリではなく、ところどころ赤錆が浮いているけれど、これはこれで、なかなか味わいがあって良い。内側は樹脂で、保冷力も十分な性能だから、人数が多いときは本当に便利だ。

樹脂タンクの外側を鉄板で保護しているというのは、まるで僕の650RS改(ヘン)のフュエルタンクみたいだよなぁと、これまでにタンク樹脂修理とその後の安否を気使ってくれたジローさんやケインさん、イシバシさんやJOH君の顔を思い浮かべつつ、まずは全員で簡単な食事を済ませた。このくそ暑い時期にはテントを夕暮れ時まで設営しないことにするのは、いつもどおりだ。

キャプテンや3.1画伯たちは、さっそくボートでフィッシングに出ると言う。彼らに当座分として海の上で呑んでもらうぶんの漢字ビールをごっそり渡すと、ミドリのスチールベルテッド・クーラーからは、発泡酒の在庫が空っぽになってしまった。前日までに、しっかりと準備をしておけばこんなことはなかったのだけど、いろいろと遊ぶ予定も多くって、つい買いそびれてしまっていたのだ。というより、島に持っていくつもりだった漢字ビールのうちかなりの量を、前夜に別の場所で呑んでしまっていた、というのが表現としては適当だろう。

僕は、スチールベルテッド・フュエルタンクの付いたカワサキ650RS・W3-Aとカヤックを、TB2から降ろした。

つい先ほどまでカワサキの前輪を荷室にタイ・ダウンしていた自在ベルトをウエストポーチに放り込み、サイフの中身を確認した。

よく晴れた青い空には、ぐっと張り出した入道雲。昨日も今日も、そして明日もきっと暑いのだろう。それがまったく苦痛でないのは、目の前に広がる海のせいだ。じつにいい気分だ。本当は、すぐにでも海に飛び込みたい気持ちを押さえて、僕は海辺で飲むための素晴らしきビールを調達することにした。

住宅が密集する山道を使えば、酒屋さんまでの道のりは1キロメートルも無いかも知れない。ただ、せっかくイイ気分になっているのに、ボッカさんにはなりたくなかった。くそ重いケースを担いで、つづらな道を歩きたくない。

僕は、迷わずスチールベルテッド・フュエルタンクのタップアッシーをオンにした。「イッパツで始動してくれなきゃ、今の気分はだいなしになるけんね」そんなことを考えながら、いつもより慎重にキック・ギアをあわせて、スターターを蹴っとばした。カワサキ(ヘン)を暖気させながら、ペラペラのビーチサンダルからスニーカーに履き替えたし、ヘルメットも、きちんとかぶった。

ばあちゃんのキャンプ場と港とを結ぶ道が、これから僕が通る道だ。やっと軽四輪車が離合できるくらいの幅の道だ。進行方向の右側には海の家とか民宿が立ち並んでいて、反対の左側は遠浅のキレイな海岸が続く。ついでに色とりどりのおネエちゃんたちも、いっぱいいた。

僕は、いつものレイバンをかけていないことをちょっと後悔しながら、港へ続く道へと走って行った。

「ああ。今年もまた、バカがやってきたなあ〜!」

何人もの方が、きっと僕に向けてツッコんだに違いない。

港にある定期便の待合所のむこうに、小さな広場がある。そこで、僕はカワサキを停めた。そこを抜け、民家が軒を接して両側につながっているアスファルトの道に入った。ちょうど4軒目の左側、郵便局の向かい側に、一年に一度っきりしか行かないけど馴染みの酒屋さんがある。

店に陳列在庫されてあった漢字ビールは、どれも「製造日:6月中旬」と箱に書いてあった。でも、カタカナビールだけは、8月上旬製造だった。

僕は、350ccのラガービールを一ケースぶん、一年に一度限りだけれども定価で買った。普段なら、ディスカウント・ショップで買う漢字ビールが二ケース買えて、おつまみもちょっとは買える金額を支払った。カワサキのところに戻って、ダブルシートのタンデム部分にビールケースを置いた。それから、自在ベルトでがっちりと リアフェンダーごと固定した。これで安心だ。ペナペナフェンダーをギャラリー(って言うな〜)に悟られないよう、隠すことができる。

僕は、もと来た道を戻った。ひとどおりの多いところでは3速で900rpmの徐行をするのは当然だ。改造車なのだから。そして、人波が途切れたところに来たならおもむろにブリップ! 海辺の空にすいこまれて消える音が、もうたまらない。嫌いなヒトにはもっとたまらない。我れながら素晴らしきカワサキ650。

妻と娘とキャプテンの奥様が待っているゲストハウスに戻ったら、ちょうど ばあちゃんが表に出て来ていた。


「あー それが来るのも、年に1台か2台になってしもうたな〜 昔はコレばっかりじゃったのになぁ〜」

やはり、このダブルワンシリーズという形式のオートバイについてだけは判別ができるらしい。

ビールをカワサキから降ろした。そして妻に、そいつをクーラーボックスに入れておいてくれと伝えて、僕はカワサキをTB2の側まで押して歩いた。

屋外で呑むカタカナビールは、きっと旨いだろう。こいつがギンギンに冷えるまでのあいだは、別の飲み物を楽しむことにしよう。

妻は、夏になったら呑みたくなると言う、マイヤーズのダークラムにコークを注いだものを作った。

僕はといえば、カービュレターの油面チェックに使うぶんには、ちょっと口径が小さいかなといった大きさのジャムの空き瓶に、氷を2個、そしてロンリコのホワイト・ラムとオレンジジュースとパインアップルジュースを適当に入れてシェイクした。そいつをグラスに注いでおいて、妻から奪ったダークラムをフロートさせた。

キャプテンの奥様はお酒が飲めない。だから彼女はクーラーボックスからジンジャー・エールを選んだ。そして娘はグレープ・ジュース。

乾杯!


ばあちゃんとこのゲストハウスの屋根は、立て簾を渡してある。本当に心地よい日陰で、僕たち4人は、快適な時間を過ごそうとしていた。

ゲストハウスの前には、TB2がようやく通過できる程度の道路が通っている。その反対側に防波堤があって、その先では 波が笑っている。

いつの間にか、みんな水着に着替えていた。

キャプテンや3.1画伯たちが、獲物を持って戻ってくるまでのしばらくの間、遠浅の海に遊んでもらおう。

1時間ほど海に浸かっていると、かなりフヤけてきた。浸透圧の関係で水分の補給をしないとマズイし、熱射病も怖い。娘には昼寝をさせないといけないだろうし。

僕たちは、砂浜にまるで突き刺さっているかのように見えるコンクリートの階段を8歩で昇り、そこから左に向きを変えてあと5歩進んだ。そしてゲストハウスに戻った。

庭先にある水道ホースを持って再び道に出た。水浴びだ。これがまた気持ちイイ。

娘がようやく寝付いたころ、キャプテンや3.1画伯たちが乗るボートが戻ってきた。漁労の結果を拝見すると、けっこう数もサイズも揃っている。たいしたものだ!

でも晩御飯&おつまみにするのには、少々淡白すぎるかということで、妻にメシを炊いておいてくれと伝えて、僕はまたカワサキに乗って買い出しに出た。今度こそちゃんとレイバンをかける、そのことにはぬかりない。

港を抜け、小さな川を渡ってすぐを右に曲がる。つきあたりを左に曲がると、なかなか品揃えのよい食料品店がある。

適当に買い物をした白い袋を、鬼コンチの左側にぶら下げる。カワサキと僕は、おにいちゃんやおねえちゃんの人波をかきわけながら、にやにやとビーチサイドを戻っていく。島ではやはり、オートバイは便利なのである

魚は串に差して、キャプテンハゲポンが炭火で炙った。

ヤキトリは、3.1画伯が専門だし、妻はいつものようにうまいめしを炊きあげていた。

僕は、ばあちゃんに借りた深い土手のある鉄板を使って、韓国風鉄板焼を作った。なかなか良い肉が、食料品店に置いてあったのだ。

ビールはギンギンに冷えている。至福の時である。

防風林がそよいでいる そして波の笑い声に混じって、遠くに聞こえる太鼓のリディム・・・。まるでカリビアン・リゾートのパンフレットに赤い文字でされてあるコピーを喚起させるような状況だ

ああ ここは モ・ベイかネグリルか・・・いやいや、ここは岡山県笠岡市白石島。今宵から、島の盆踊りだ。ゆったりとした、そして独特にタマった和太鼓が、丘をひとつ隔てたここまで聞こえているのだ。

夕暮れせまる中、男どもはそれぞれのテントを張る。女たちは、簡単に食事の片付けをする。そのうちにやがて陽は暮れた。僕を除いた全員は、住宅地の中をあるいて、港の向こうがわにある広場へと向った。

すこし遅れて僕は、カワサキで広場を目指した。一応、何かを期待していた僕だったが、さすがに踊りの輪のすぐ側にまで、オートバイで乗り入れることだけは、はばかられる。そしてそれは、あまりにも「痛い}。

さて今宵の白石踊りだが、島外からのお客様に見ていただくというイベントの色あいが強いものだった。僕にとってその様を観るのは今回が初めてだったのだが、今夜の踊り手は、専用の装束を纏って踊っていた。

それから僕は、口説きと太鼓がある櫓の周囲には、EV社のSX200が4発も用意されていることに気付いた。以前に観たときには、TOA社のラッパ式スピーカーだったが、今夜の島はまるで気合十分。予算も張り込んでいる(おおきなお世話か?)。

道理で、ばあちゃんのキャンプ場まで音が飛んで来たわけだ。僕は納得した。

やや食い気味で進む「口説き(音頭)」を支える、もったりとタメのある太鼓。そしてそのビートをきっかけにしていることには確かに間違いがないんだろうけれど、だからといってドンと鳴る瞬間に何か特定のアクションをとるというわけでもない、複雑で不思議な十数種類の踊り・・・・

みようみまねの「にわか踊り」などしようという気力さえ湧かない驚愕の踊りについて、感動の鳥肌が立つ。

そういえば・・・阿波踊り。

足さばきがキチンとしていないシロウト阿波踊り集団は、キョンシーを思い起こさせる。正直言って大嫌いだ。きちんと熟練なさっている有名な連の人々の踊りに感動したばかりの僕は、すっかり興醒めしたことがあった。

そういえば・・・ジャマイカのキングストン

ある家の玄関先に、でっかいサウンドシステムが積まれてあった。その前に立って、ひとり踊っていた真っ赤なワンピースのおばあちゃんを見たことがある。そのときには妻が、僕の顔を見て「かなわんなあ」と言った。

そんなことをふと僕は思い出していた。

徳島の、またジャマイカの踊りと、この島の踊りと、どれも違っていることは当然なことだが、凄みがあって勇壮で悲しい、そして美しくて、ヨソものにはきっと踊りこなせない空間が、ここ白石島にもは存在している。

口説きの演目は、「那須の与一」そして「七回忌」だった


やがてゲストハウスに戻った僕たちのところには、訪問者あり・・・。


翌日の朝、定期便に乗って、ナオキくん(24)が、白石島にやってきた。

僕からの依頼品「ディスカウンタの漢字ビール・7月下旬製造」と「追加補充のホワイト・ラム」を持っていた。そのほかにナオキくんが背負ってきた荷物のなかには、きっちりシェイカーもパッキングされてあったので、これでもっと旨いマイタイを呑むことができることも含めて大歓迎である。

さて僕は、どういうわけか、ちょっとカゼをひいてしまったみたいだった。なので、海にも入らず、アマチュアバーテンダー・ナオキ作のカクテルに、だらだらと浸った。

味覚と嗅覚が少し麻痺しはじめていたのを言い訳にして、昼メシ作りも手を抜いた。凝ったものを作ろうにも、鼻が利かないし、食中毒の原因になってもいけない。

味見なしカレーを平らげたあと、ナオキくんは、ざぶざぶと泳いで100m沖合いにある岩礁に渡った。かの橋本功さんも、その「沖の岩山」で 瀬戸内海をひっきりなしに往き来する船を眺めりしたという、あの名所である。

ここが禁猟区域ではないことは、あらかじめばあちゃんに確認していた。 だから、もしサザエなんかがあっても、勝手に取ってきて食ってもよろしい・・・あればの話だけど・・・ と教えてもらっていたのだ。

この夏の間、おおぜいがきっと同じようにして荒らした場所だろうということは、容易に想像がつく。だけど、ナオキくんの腕前について僕はひそかに期待を寄せていたことも、また事実だったりした。

しばらくしてから僕は、娘をカヤックに乗せた。ナオキくんのいる岩礁まで漕いで行ってみることにしたのだ。

妻も 別の一人乗りカヤックで後ろをついてきた。

ZZZZZZ

そのほんのわずかな間で、娘は爆睡を始めていた。

そして ナオキくんはキッチリと・・・・・・

いつも僕が使っている安物金属製卓上七輪のなかには、よく乾燥した竹を細く割ったものを、ひとつかみ放り込んだ。丸めた紙に火を点け、竹に炎を移す。それの上に、昨日の残りの消し炭を載せ、新しい切り炭を置いた。

あとは、エア・インテークダクトを風上に向けて、堤防の上に七輪を据えた。

僕がカワサキに乗って食料品店まで往復して戻るまでの間に、炭火は安定稼動している。卓上七輪を堤防からテーブルに移動させて、真っ赤にエキサイトしている炭を、平たく展開した。さあ今夜も、流れ宴会に突入だ。

料理は、ナオキくんに任せて、僕はのんびり過ごさせてもらうことにした。

炭で熱されたサザエに注いだ濃口醤油が、鈍感になってしまっているはずの僕の鼻腔をくすぐる。

連発する咳とクシャミのせいで、数年前に一度だけ発症した花粉症のような状態になっている。意識が、なんだか朦朧としてきた・・・・・

ああひと月前に、島根県で食ったのには、あんなにたくさんのツノがあったのに、どうして瀬戸内海産のサザエは こんなにスベスベしているのだろう・・・・

しかし、せっかくのサマーホリディなのに、しかも白石島でカゼをひきこむとは、不覚だ。僕もいつまでも若くはないということなんだろうか。いやいや、昨日とは、風の温度が明らかに違っているせいに違いない!夏の扉が ちょうど今日閉じられたんだろう。

今年の島コラムは、小説で紹介されている風景を、デジカメで切りだしてネタにするという企画を一応考えていたけれど、そいつは、ボツにしようと決めた。

体調がシンドいせいもあるけど、今日の光景はもう秋だ。夏色じゃないのなら、意味は無い。まして僕の腕前は、どアマチュアなのだから、WEBでご閲覧いただくのも気の毒な話だと思う。

僕は、炭火の上で焼きあがったばかりのサザエを頬張った

「うほー」

まいう〜、とぼくは言おうとしたのだ。だが口の中には、まだジュワッと熱いサザエがあったので、こうなってしまった。

「はい ビール」

「ほんとかよ」

オフ・ホワイトに 黒と銀色の文字で仕上げたアルミのカンを、妻はさし出してくれた。

「漢字ビール。冷たいの」

おいしい漢字ビールだった。カタカナビールじゃなかったから、みんなに遠慮なく飲んだ。

次にこの七輪に炭火を起こすときは、きっとすっかり秋だろう。

そのときの肴は、まずまちがいなく、とびっきり上等で新鮮な秋刀魚だろう。

「むふふふ」

こみ上げてくる笑いといっしょに、白石産サザエを、僕はもう一個漢字ビールで流しこんだ。そして、今年の夏も、大満足で、終わった。


◇ 超ゴージャスなオマケ ◇

はらだ3.1画伯 作

砂に書いたラブレター2

はらだ3.1画伯には、かわいそうなことですが、うちの娘は今年も彼に、ずいぶん長い間遊んで貰いました。やはりそのときには、娘がリクエストしたとおりの絵を描いていたそうです。涙なしでは語れないこの作品群・・・ そして、一貫性のあるその画風・・・・

とほほほほほほ〜

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