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−第6章 2節 It's So Easy−

Nov 29,2009

いつものように腰上難有&水没(かも)エンジンは、練習台として有効活用される。それではこの貝合せ式クランクケースを割る実験を開始してみよう。

クランクケース・セパレータを用意して、本来ならジェネレータのステータコイルを固定するネジ穴にセットした。セパレータのシャフトをスパナで軽く締め上げた後にケースぜんたいの外周をプラスチックハンマーで叩く。セパレータのシャフトを更にわずかに締めてまたハンマーで叩く。同じことを何度か繰り返すうち、めりめりと小さな音が聞こえてくる。開いた開いた、クランクケースが割れた。

ちゃりん、と小さな音が聞こえた。ワッシャが一枚と半月状のコッター(っていうのかな)が二枚落ちてきた。おや、どこから出てきたんだろう。いずれパーツリストと照合せねばなりませぬ。

今度はクランクケース・セパレータを反対側、つまりクラッチ側にセットして締め付けた。クランクシャフトが抜けた。クランクウエイト外側あたりに錆がある箇所もあったが、それを除いたらそれほど酷いコンディションでもない雰囲気だった。資源ゴミにしてしまうのはもったいない気がしたので、コネクティングロッドのラージエンドを掃除することにした。洗浄してからゾイルを塗布して清潔なビニール袋で保管する。

クランクケース・セパレータさえあれば、貝合せ式クランクケースなんか怖くない。イッツ・ソー・イージィ。

それから今回の本丸、クランクシャフトのオイルシールを取る。ベアリングプーラが上手く掛からなかったので、ともかく分解だ練習だと強引に外した。オイルシール外しを使ってコジってしまったせいで少し変形した2個のオイルシールを見て思った。「このエンジンって水没しただけだったなら、オイルシールは再利用できたのかも」 ま、深く考えてはいけない。

クランクシャフトの両端に使われるベアリングは、それぞれがクランクケースに残っている。インナーレースを指で回してみようとした。ジャリッとする感覚の抵抗がある。当然どちらも使い物にはならない。JIS規格6306のベアリングは、それほど高価なものではないことをわたしたちは知っている。これを叩き抜く。抜いてから新品ベアリングをセットする際の治具として活躍してもらおう。

今度はガスケット。貝合せを割るときに、ガスケットはどうしても破断してしまうからほぼ自動的に新品ガスケットを誂えることになる。 先日、シルクロードのためにクラッチ側のクランクケースカバーに使うガスケットをホンダから取ったことがあった。近所のバイク用品店に「出るようだったら取り寄せておいて」とお願いしたけれど、請求書を見て驚いた。500円くらいのつもりだったのが2,000円ほどの額が書いてあった。バイク用品店の手数料は多少上乗せされていたせいもあるけど。ん〜手数料かあ、30年前のオートバイに使うガスケットの代金には本田技研の管理料も相当含まれているんだろうなあと思ったことがある。さあエルシノアのガスケットが出るとしたら、いったいナンボとるんやろかと不安になったりする。

実際にオーダーするかどうかは、最終的に価格次第になるだろう。もしも一枚が2,000円を上回るならジブンで切って作ったほうがきっと安いだろう。どうせノンアスベストシートになるんだろうし。

わたしは練習用エンジンからガスケットを丁寧に剥がした。破断した箇所がこれ以上壊れないように願いながら。縁日の「カタヌキ」を思い出す作業だ。

書庫に放置されていたスケッチブックから画用紙を何枚か破りとって、それにエンジンの部品を当てがってスタンプする。そうやって外周やボルト穴の正確な位置を写し取るわけだ。それから部品の形跡のある画用紙に古いガスケットを配置していく。マーカーペンで古いガスケットの周囲をなぞると、これから必要となるガスケットの型紙が完成だ。

貝合せ部分のガスケット、クラッチとミッション部分のガスケット、シリンダのベースガスケット、ついでにジェネレータのガスケットの型紙を一連の手順で作ってから、近所のコンビニエンス・ストアでコピーを取る。倍率が100パーセントであることを確認するためにコピー先の紙を貝合せ部分に沿えてチェックした。

パーツリストは、リンドバーグさんに複製版をオーダーしていた。わたしたちには何の部品を新しく調達する必要があるのか、ぜんぶわかっている。だからといって、必要なパーツの部品番号だけを、お会いしたことすらないエルシノア系ウエブサイトのマスターに問い合わせたりだとかコピーのおねだりをするという行為などできない。もってのほかだと思う。拙サイト黎明期のころに「問い合わせ」というタイトルのメールで何度もネダられた。ブチ切れそうになった記憶がわたしにはあるのだ。 そのリンドバーグさんからの連絡によると、その納期は約3週間かかるということで、あと10日ばかりわたしとナオキくんはその到着を待たなければならない。

ラクダぼげげえで夜が明け、あっという間に数日が経った。 わたしが三日間ほど仕事で留守にすることになっている初日に、リンドバーグから複製版パーツリストが届きました、とナオキくんから連絡があった。運賃と代引き手数料を商品の代金に加えると、だいたい4,000円ほどになったという。なるほど、ときおりオークションで見かけることのある「エルシノアMT250パーツリストのコピー製本版」美品です4,000円スタートってのはコレのことか、ジブンでコピー製本版の複写を作ってから売り捌くわけか、あさましいことよのう。安易よのう。

何の部品が必要なのか、ナオキくんに伝えてあった。 彼は、初めて見るオートバイのパーツリストを前にしてずいぶん悩みながら、必要なパーツの部品番号をピックアップしたらしい。「なにごとも経験でござんす。頑張りたまえ」と携帯電話による遠隔操作で彼に喝を入れるわたし。

  • クランク右のオイルシール
  • クランク左のオイルシール
  • キックシャフトのオイルシール
  • ギアシフトのオイルシール
  • クランクのガスケットシート
  • クラッチのガスケットシート

リストが整ったところで、ナオキくんは職場の昼休みの時間を使ってWebを巡り、純正部品を通信販売してくれるサイトを探すことにしたらしい。「よさそうなところがあったので在庫確認・価格確認・納期確認をしてみたところなんですよ」と携帯電話で彼は言った。

その日の晩。 出先での夕食を終えた頃、わたしの携帯電話にナオキくんから着信があった。

「大変です。クランク右のオイルシールが終了しているそうです。それからガスケットも無いそうです」

致命的な問題が発生してしまった。 オイルシールが無いと一次圧縮が得られない。燃料を吸い込む負圧が発生しなけりゃツーサイクルのエンジンは動かない。そういうこと、なのです。

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