−第5章 3節 Immigrant Song−

Oct 30,2008

ロシナンテさんから譲っていただいた時のままの状態で、朽ちかけエルシノアの部品群は、バナナを輸入する際に使うダンボール箱で眠っていた。

その箱の中からレクチュファイアを取り出した。純正色の配線を頂戴するのだ。

電線の結線をハンダ付けで処理するなら、わたしの腕前を考えると危険だろうと思っていた。コテの熱のせいで壊れる電子部品が数多のパーツにはあるらしい、ということは知っているが、何の部品がどの程度の熱で壊れるのか、よくわかっていない。それならやはり、圧着端子で接続したほうが確実だ。そのあとで熱収縮チューブでカバーする方法をとることにしよう。使わない白と茶の線を絶縁すると、出来上がりだ。

方針は決まった。

本番仕様のレギュレート・レクチュファイアを、エルシノアに配線。これで充電系の電源がDC12Vになった。

当然、電球を取替えなければいけない。

12V電球の在庫を探しに、納屋「エルシノ庵」に足を踏み入れた。

わたしの前を通り過ぎたジャンク車は、拙サイトのネタに取り上げてないものもある。そうした車体からひっぱがした電球を放り込んでいる箱を出してきた。アバウトながら規格別に整理してある。使えるものは使い回していく。

テールライトやウインカーのレンズを取り外して、電球を交換する。そのついでにレンズ内側の掃除も忘れちゃいけない。歯ブラシと中性洗剤、流水とエアブローなどで妥協点へと導く。

各種インジケータ類のランプにも手を移す。

ハンドル左右にあるスイッチボックスを取り、スピードメータとタコメータのケーブルを取って、ステアリング・アッパーブラケットからボルト2本を外すと、保安部品はごっそりと車体から離れる。

速度警告、ハイビーム、ニュートラル、方向指示、それからポジション。

ウインカリレーも12Vのものに差し替える。

ホーンはあえて6Vのままにしておいた。壊れるまで、やかましく鳴ってもらおう。

さあてヘッドライトだ。

前節「魔王」で書いたとおり、ヘッドライトで使う電気を発生させるコイルは、すでに摘出してある。電源はバッテリーから取る。

ノーマルのメイン・ハーネスを切断することは避けたい、そんな方針で、いろいろと考えてみることにする。

エンジンから立ち上がってきている6極カプラーには、5つの線が入っている(前節「魔王」にて既出)。そのうちのひとつ、「白に黄ライン」はエンジン内部で末端を絶縁してある。もはや何の仕事をすることもない。(使わない電線をわざわざ取り外すのが面倒だってことが、ノーマル配線を崩さないひとつの理由だったりもする)

メイン・ハーネスの側にも、「白に黄ライン」が当然あるわけで、これにバッテリーのプラスを接続する配線を作ってやればよい、ということになる。

先がマイナスの精密ドライバーのうち、いちばん小さいものを探してきて、メイン・ハーネスのカプラーから「白に黄ライン」の端子を突いて引き抜いた。

テストが成功したら、後で2極カプラーを奢ろう。

メイン・ハーネスの「白に黄ライン」は、フロント周りの保安部品に8極のカプラーで接続されるようになっていた。おそらくハンドルの右側スイッチまで伸びているのだろう。エルシノアの配線図が無いから、あくまでも推察に過ぎない。

右側スイッチの中身を確認することにした。ついでに分解清掃だ。接触不良の経験は嫌というほどある。そうした経験は、わたしを慎重にさせる。

考えていたとおり、やっぱりここで「白に黄ライン」は、「青に白ライン」と「茶に白ライン」に電気を渡す仕組みになっていた。納得しながらスイッチケース内部をエアブロウして、接点をアルコールで湿らせた綿棒で拭く。

「青に白ライン」の行き先は、左側のスイッチだった。ハイビームとローの切り替えがあるはずだ。分解して中身を見て、予想を確認してから綿棒で掃除した。

スイッチで「青に白ライン」の電線は、青の電線と白の電線に分岐する。それぞれの線の行き先は、ヘッドライトのソケットだ。

あれ?

ここでわからなくなってきた。

まったくノーマルのエルシノアでは、ヘッドライトの電球は、コイルで発電された交流で燈っていることになるの???

今度の配線では、バッテリーから直流が流れることになるけど、それでいいの???

わからん。

「師匠先生〜! あっそびましょ〜♪」

プププ。

ソフトバンクの呼び出し音が聞こえてくる。

そして携帯電話の向こう側で、先生が話す。

「交流の場合だと、ものすごい速さで点滅しているわけなのだよ」

そうか。右足を踏み出して、その足が着地するまえに左足を引き上げ、左足が地面に着く前に右足を上げる。その右足が地面に届く前に左足を持ち上げる。これを延々と繰り返すなら、空だって飛べるのだっていうのと同じ理屈なんだ、と納得した。

ヒ・ミ・ソ基地エルシノ庵に入った。太字のマジック・ペンで「W3ノーマルパーツ在中」と書き殴ったダンボール箱から、W3のヘッドライト・ソケットと電球を取り出した。ホンダとカワサキでは、配線の色は違う。エルシノアの6V電球とソケットを回路から取り外して、W3の12Vのものと入れ替えた。

師匠先生から一時的に貸してもらっているMFバッテリを配線する。原付スクーター用だろうか。

ヘッドライト電源の配線を作った。50cmくらいの電線の両端に、ワニ口クリップをカシめてあるだけの、一時的なものだ。

メインスイッチをオン。

よ〜しよし。

速度警告灯を除く全部の動作が確認できた。

しっかし6V用のホーン。実にうるさい。

二十歳代に乗っていたKDX200SRのことを思い出した。あれと比べたら百倍くらい音が大きい。

ヘッドライトには、かつてW3-Aの行く道を照らしていた電球が、明るく灯っている。決して暗くはないような気がしないでもないが、当初考えていたとおりに、ハロゲン化を目指す気持ちはブレない。

わたしのW3-Aにはハロゲン化を目論んで、YASUZOU君から貰ったジャンク改造車のRZ250LCのヘッドライトをコンバートした。そのままユーザー車検に臨んだ。それから現在もそのままにしてある。

それにはハロゲンH4のバルブが使われてあったから、今回も適当なジャンク車両からエルシノアのと口径が一致するH4バルブを使ったヘッドライトを探し出すつもりでいた。一度成功した事例があれば、同じ道を辿ろうとするのが普通だというのが凡人の行動原理というものだ。

エルシノアのヘッドライトの直径は14cm位だった。うちの在庫のものはどれも大きすぎる。弱ったものだ。カバンの中にはエルシノアのレンズをしのばせ、指先には14cmを憶えこませて街に出ることにする。

郊外型スーパーの駐輪場には、ビラーゴ250が停まっていた。

この大きさなら、適合するかもしれない。

JRの駐輪場に、ブロンコがあるのを見つけた。これも使える大きさじゃないのかな、と思った。

オークションで中古部品を探すか。それともバイク用品店で新品を買うか。さあ、どうするのが最善手なのか考えながら携帯電話を手に取った。発信音がプププと聞こえた。そのうち音が途切れ、会話が始まる。

「師匠先生のところに、適当な在庫はありませんか」


人生は深い。

今日もまた、一を聞いて百を習うことになる。

「ソケットを改造するなら、レンズは純正のままでハロゲンにできるよ」

がびーん どびーん はげちゃびーん

ヘッドライトのハロゲン球というのは、H4しか知らないわたしは驚いた。ひたすら驚いた。ついでに無知と不明を恥じた。

その電球が手元に届いた。

スタンレー社の製品だ。スズキのスクーター、レッツ・ツーだかフォーだかの純正部品だと師匠先生は言っていた。

早速箱から取り出して、ソケットとの適合を試そうと思う。

両手に軍手を装着した。ガラス部分には直接手を触れたくない。ビニール袋がかかったままの状態で、電球をソケットにあてがった。

ソケット内径に対する電球の外径は、まったく問題無い。取り付けのための切り込み位置が、若干異なるということがわかった。このくらいのことなら、在庫のジャンクソケットをちょちょいと削れば、ハロゲン球をセットすることができる。

エルシノ庵からソケットを取り出してきた。何に使われていたものか記憶が無い。圧着端子の形からメーカーだけでもわからないかと思ったけれど、誰の仕業か3本の線の端は、ばっさり切られていた。あるいはわたしが切断したのかも知れない。それならそれで精神状態がどうだったか見当も付かない。配線の色だけ見ると、カワサキ車っぽい。はて。

プライヤに先の曲がったラジオペンチなどを駆使して、ソケットを強引に分解した。

電球に接触する金属の筒を指先でつまみ、既存の切り欠きに対してどのくらい加工が必要となるのか、油性のインクで直接書いていった。それからグラインダとダイヤモンドヤスリで溝の形を変えていく。

ソケットからは3本の線が伸びる。ハイビームとロービームそしてアースだ。熱収縮チューブを利用して、ホンダ純正配線の色になるように整えて、ギボシ端子で仕上げた。

車体にセットして、点灯してみた。

うむ。とても明るい。ギンギンに明るい。

この方法だと、純正レンズのままでそれなりに明るいってことがちょっとカッコいい。

こりゃW1S-Aのユーザ車検のときに、これを拝借して行ってみようか。ふふふ。そんな具合に、色気だって出てくる。けだし当然だ

ヘッドライト関連の工作は、これにて終了。


残り少なくなった問題点、「エアクリーナ・エレメント」をどうするか、という話題に触れようと思う。

エアクリーナ・ボックスがあるオートバイの場合だと、ボックスの蓋を開くと、一般にはエレメントがあるはずだ。

この車体の場合は、丸いパンチ穴が開いた鉄の筒に、かつてはエレメントだったもの、が巻きついて入っていた。そのネズミ色のスポンジ状の物体は、指でつまむとボロボロと崩壊していった。

ホンダから純正パーツが出るかどうか調べないまま、代替プランに甘えさせてもらうのはどうか、という向きもあろうかと思いながらも「空調工事屋さんが使う」不織布をエレメントとして使うことにする。むろん師匠先生直伝である。

鉄の筒の外周と高さを適当に調べて、空調工事不織布をハサミで切る。筒に巻きつけて、針金で周囲を固定した。

4stのエンジンオイルを表面に塗りつけて仕上げる。


エルシノアの場合、エアクリーナ・ボックスは薄い鉄板で作られている。プレスで形作られた複数の部品がたくみに真鍮ロウで接合されている。エアクリーナ・ボックスはライダーの尻の下に据えられ、その底面には、バッテリーを収納する箱が一体になっている。

そのバッテリーを収納する箱だが、容積がなんとも小さい。本来6Vのバッテリーがちょこんと収まっていればよかったスペースなので致し方ないところだが、さすがに狭い。

どのようなバッテリーなら、このスペースに押し込むことができるのか検討する必要があるの。ジャンクの部品箱からエアクリーナ・ボックスを持ち出して、師匠先生のお宅へ出かける。世の中には、色々なサイズのバッテリが存在しているのだから、きっと何か適当なものがあるはずだ。

4Ahくらいのサイズのものから試してみる。

密閉式バッテリーだから、縦にしたり横にすることができる。試し方のバリエーションが多いのは便利だ。助かる。

入らない。

ひとつ小さいものをあてがう。

まだ無理。

さらにもうひとつ小さいものだと、箱の中になんとか滑り込ませることができた。しかし、箱の奥行きに対して長さが余っていて、バッテリーの固定を兼ねた蓋が出来ない。弱った。

既出のネタに、なんかそんなのがあったなあ・・・・。調べてみると、シルクロードのステップ改造の箇所。そこで使ったギャグをもう一回。

バッテリーの固定なんぞ、ゴムバンドで止めておきゃいいじゃないか実際ダブルワンなんかそうなんだし、と2秒くらいは思うものだけど、このオリジナルの蓋がじつに曲者だ。このフタの表面にはサイドカバーを固定するためのステーが出ているのだ。

結局フタをきちんと閉じることができたのは、2.3Ahクラスつまり原チャリスクーターに使うものくらいしかなかった。それでもいい。無いよりはいい。

最近の原チャリのバッテリーの接続は、プラスの端子とマイナスの端子、それからヒューズまでが一体になったソケットをバッテリーに刻まれた溝に従って差し込むものらしい。もちろんわたしが不明なだけだ。わざわざここに書くことではないが、あえて恥を曝す。

一体式配線セットは、師匠先生の手持ち部品から譲って貰った。

こうして、本番仕様の配線を拵える準備がぜんぶ整った。

テスト用の配線だと、メインスイッチのオンオフに関係なく、ヘッドライトが灯ってしまう。メインスイッチから伸びて来ているカプラーに、ヘッドライト電源を割り込ませて対応することにした。

オリジナルの線を切らない方針だから、秘密の細工を施した2極のカプラを間に入れる。。

原チャリ用の一体式バッテリーソケットから伸びる2本の電線、つまりプラスとマイナスの線に、新しくギボシ端子を圧着した。レギュレート・レクチュファイアから伸びてきているバッテリー用の端子をつなげた。

本番用のバッテリーを接続して車体に収める。

蓋をして、2本のビスで固定。

へへ。電装が完成しちゃったよ♪


エルシノ庵から、サイドカバーを持ち出してきた。

つごうフレーム4本エンジン4基の在庫を誇るわがエルシノ庵にも、このサイドカバーは一枚しかない。一般世間ではどうか知らないが、我が家では言うまでもなく貴重品だ。

車体に取り付けてみよう。

シートレールあたりにフック状の突起が二つある。

サイドカバーそのものには、フックに対応したスリットが二つある。それから中央付近にコインで回すタイプのノブがある。ノブの他端には、ワッシャと割りピンとスプリングが取り付けてあって、バッテリーケースの蓋にあるステーに開けられた穴に差込んで90度回せばバネの張力で止めることができる仕組みだ。

ああ、そりゃあ、あかんワ。

サイドカバーを失ったエルシノア250が、やたら世の中にたくさんあるわけだわ。

ふた昔、いや三むかし前のツーサイクル250単気筒の脈動ってものは、なかなかのものだ。ララ・パンパンパンなんていわせているうちにスプリングのテンションが負けてしまうのも道理だ。そのままサイドカバーはひらひらと車体から離れていく。

地球には引力がある。

エルシノアのサイドカバーは、軍手とかW1S-Aのサイドカバー/オイルタンクのエンブレムなどと同様に路傍の石となり、ひっそりと佇んでいるのかも知れない。

それともあるいは、この世のどこかにあるという「エルシノアサイドカバーの墓場」に集められているのかもしれない。(「紅の豚」風味)

落として失うのは嫌だから、対策を考えることにする。

  1. ナオキ君には、もともと無かったことにしてもらって、オイルタンクまる見えで乗ってもらう(これがオリジナルの仕様だ、と言い張るのもアリなのかも知れない)
  2. コピーを作成して、それを使う
  3. オリジナルに細工をして、脱落防止対策を講じる

脱落防止対策といっても、オリジナルに穴を開けたり、切ったり貼ったりしないなら、もとから開いてあるサイドカバーのスリットを利用するしかない。

そこでわたしは、スリットをシートレール横のフックに引っ掛けたとき、スリットに若干できる隙間に、長めのインシュロックを通して、フレームに固定した。バッテリ交換などのときには、インシュロックを切断して交換することになる。運用でカバーするのもメンテナンスのうちだと思い込むことにしよう。昔乗っていたTY250Sのリアフェンダーだってフレームにインシュロックで止めていたじゃないか。

完璧だ。きっと。

これなら欠失したとしても、あそこまでやったのだから、と諦めもつくだろう。

自己責任、ってやつだ。

よっしゃ、できた。かっこいい。

コレがウチのエルシノアだ。


しばらく後日、師匠先生のところに何かの機会でお邪魔したときお礼を述べたときのことだった。

「エルシノアの進角固定が、どうしても気に入らない」

どうやら、ガバナー(スパークアドバンサ)を取り付けたい、と考えられているご様子だ。

恐ろしい。

師匠先生、恐るべし。

わたしはほんとうにラッキーなんだと思う。一を聞けば百を教えてくれる特殊能力がある人なんてのは、そう世の中には居ない。

もうすぐ、エルシノアは走り始める


このコラムについて

8月の終り頃、ネタ作成専用パソコンが壊れてしまいました。データ復旧に手間取ったりしたせいで、ずいぶん間隔があいてしまいました。申し訳ないです。

その言い訳は、「アップル・ファインダーと彼女/その8」に詳しく記述しております。

Ah, ah,
We come from the land of the ice and snow,
from the midnight sun where the hot springs blow.
The hammer of the gods
Will drive our ships to new lands,
To fight the horde, singing and crying:
Valhalla, I am coming!
On we sweep with threshing oar,
Our only goal will be the western shore.


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