スズキのサイドバルブ式発電機「SE400A(グレコのストラトみたいな名前やな)」は、燃料タンクの内側を樹脂でコーティングすれば、その再生は完了する運びだった。
でも・・・・・。
だめなのだ。気が乗らないのだ。
フュエルタンクの内壁が、赤い錆びでガサガサだったのだ。おまけに…。
鉄製のタンク。その底部にパイプが溶接されてあって、そこに接続されたホースでキャブレターに燃料を送る仕様となっている。これが問題なのである。
タンク内壁をケミカルで掃除してから樹脂で固めようとすると、パイプが詰まってしまうかも知れない。なにしろそのパイプはJの字のように湾曲している。あとで穴をコジあけることも困難だと予測される。
弱ったもんだ。
こんな理由から、グレコのストラトみたいな名前の発電機は、その完全修復を足踏みすることになったのだ。
下の娘と一緒に近所を散歩していた。すると、以前に耕運機を貰った場所に、また何か良さそうなモノがあるのを見つけた。その瞬間から、わたしの右手には2歳の幼児の左手、わたしの左手には、赤と銀の重い箱が。
ホンダEM300というロゴが貼られてあるジャンク発電機から、フュエルタンクのキャップを取り外した。内部の様子を探るのだ。臭いを嗅いでみたり、人差し指で内壁を触診してみたところ、腐った燃料が入っているわけでも、中が錆びているということもない。じつに不思議なゴミ(ついさっきまで)だった。スズキの発電機のことで悩むより、これに手を入れたほうがいいかも知れない。いつものとおり、安易にそう考えた。
潤滑油は適量が入っていたし、特に汚れてもいない。実に不思議なジャンクだ。
プラグを取り外してから、リコイルスターターでクランキングするかどうか試してみよう。
あれ。スムーズに動くぞ。プラグホールを指で塞いでスターターを引く。コンプレッションは感じる。それならば、とプラグに火花が飛ぶかどうか試そう。
やはり、特に異常があるような気がしない。
どうしても捨てられた理由が知りたい。わたしのチェック対象は、キャブに移った。
「これもサイドバルブか」
キャブをエンジンから取り外しながら思った。
キャブを掃除しようと分解して驚いた。
真鍮のフロートが見事に変形していた。膨らんでいるはずの部位が凹んでいたのだ。
「これかもね」
原因の一端を掴んだ気になって、キャブ掃除の定石どおり、小さな孔すべてを掃除した。
変形したフロートはそのままの状態で、一度キャブを組み直して本体に取り付けた。
調子のことは別にして、これでエンジンはとりあえず動くだろうと思ったのだ。
残念ながらこの発電機、この時点では動いてくれなかった。
悩んだ挙句、師匠先生のところへ持参して、指南を仰いだ。
「やっぱり燃調とみた!」
あれだけスターターを動かしても、プラグがカブっていないことがだいたい異常だ、と先生は言った。
フロートを修理してみよう。うまくいくかな?
妻娘のヘアドライアで暖めた。うまくいくと思ったからだ。
10分耐えた。でもカタチは変わらなかった。
鍋に湯を張って暖めた。うまくいくと思ったからだ。
10分煮沸した。でもカタチは変わらなかった。
ええい。業を煮やしたわたしは、直火で暖めることにした。うまくいくと思ったからだ。
3秒でカタチは変わった。半田が溶けて、フロートはツメとタイコのふたつにセパレートしたのだ。
大失敗である。ど素人の仕業である。
分解してあるキャブの部品をひとまとめにして、次の便で師匠先生に相談しようと思った。最近われながら深追いしないで整理整頓することができている。
あ。
キャブのボディとフロートのタイコ部分が、わたしの手から滑り落ちた。
ぐしゃ 鈍い音がした。
タイコ部分が、破れていた。
だめだだめだ。冷静になろう。このままではさらに遭難してしまうぞ。
ホンダからガソリンを全部抜き取った。抜いたガソリンをスズキに移して、スターターを引いた。
トトトペト・トトト・・・
当然のことで、スズキのサイドバルブエンジンは動き始めた。ああ、癒されるなあ。
こうして、ホンダのことはいったん諦めることになった。来る夏に向けて、スズキを完全に修理しようという気にようやくなったという次第である。業は深い。
でもお金はかけたくない。なんと因業なことだろう。
もうひとつ。発電機と耕運機と草刈機に手を取られて、どうしてもシルクロードとダブルワンに時間を割くことができない。なんと業の深いことだろうか。
2年くらい前にしんえもん君から貰ったKLEEMのA液B液を使って、タンク内部を掃除した。
内壁の表面処理をどうすればよいのかずいぶん思案した。KLEEMのC液、つまり表面のライナーが無いから。
FRPで部品を作る機会があるかも知れないと思って買い置きしていた白色ゲルコート。きっと耐ガソリン性だろうから、これを使うことにしたが、ほんとに正しいかどうか自信は無い。溶剤で粘度を下げて、J字のパイプに詰まらないように工夫しよう。
ここまで修理したなら、妻にでも動かすことができるだろう。わたしがいなくても家族がなんとかできることも前提にしなければならない。自然災害を一度経験したから、そんなことを強く思う。
煙草がけむいわと 細めに開けた窓 潮の匂いだけが流れ込む
ドアを開いてひとり海へ 歩くお前を車で見てたよ