我らに電気が出る理由

Nov 11,2006

「お手並み拝見。捨てようと思ってたけど、直してみるかい??」

なんていうか、こうしたビミョーなモノが、わたしのところに集まってくるのは、きっと業以外のなにものでもなかろうと思う。やれやれ。

んで、今回やってきたのはスズキの発電機。船舶に積んで使っていた、古いガソリンエンジン。しかも4ストロークってシールに書いてある。小生スズキ謹製の4ストロークは初めてゆえ些か不安が・・・・。(もういいって・・・ってジムニーのこと忘れてるし)

「災難を食らったときにポータブルの電源があれば便利だよなあ。」

なんぞのときにそんなことを思った。そのなんぞのときにはハイエース・ヴァンで使っていたバッテリーを取り外したものにインバーターを接続して100ボルトを取り出す「プチ・システム」を用意した。今のところそれを使わなければならない状況には遭遇していないが、ガソリン発電機があるならもっと素晴らしいことになる。たとえば停電した時、冷凍庫の電源をコレに切り替えるとか。もちろん遊びごとならば、そのアイディアにはいとまがないだろう。

しかしよくもここまで痛んだ筐体だよなあ、そんなことを思いながらこの立方体を観察していると、てっぺんに燃料タンクがあることがわかった。その下にエンジンとジェネレータが隠れてある。その周りに都合4枚のパネルが壁を作っていた。その燃料タンクと壁とはネジ止め固定になっているが、よーく錆び付いているから、潤滑剤をスプレーしてしばらく待つことは常道だろう。

待つ間、りコイル式スターターを引っ張ることを試すが、ビクともしない。この現象にも、きっと原因はある。そしてそれが壊滅的なものでないことを祈ろう。この時点ではそのくらいしかわたしにできることはない。

油分の潤滑はもうよかろうとプラスドライバを手にして、壁を外していく。おや、このキャブレターには見覚えがあるぞ。ってこれは一連のトラクターに使われているものとまったく同形式のものだぞ。ふむ。このくらいの排気量には相性が良いものなのかも。

壁を外してからスターターを本体から取り外すと、クランクシャフトの端が顔をのぞかせる。そいつを指先で摘んで、クランクが動くかどうか試してみたところ、わずかながら動く気配が感じられた。少なくともピストンがシリンダー内壁に錆び付いて固着している、といった状況ではなさそうで少し希望を感じた。

エンジン部分を注意して見ていた。シリンダー部分とクランクケース部分は、どうやらふたつに分けることができない一体鋳物だった。薄っぺらいシリンダヘッドにはプラグがネジ込まれてある。それだけを見ると、2ストロークかと見て取れる雰囲気だ。

「ということは、サイドバルブか」

シリンダヘッドを固定してある5本のボルトを注意深く取り外した。そしてシリンダヘッドをめりめりと外して内側を見ようとめくった。

「うげ」

いったい何がどうなったことでこんな現象が起きたのか見当もつかない。スラッジと錆びとカビとカーボンをそれぞれ1オンスずつシェイカーに入れてよく混ぜたものを塗りたくって5年くらい放置した、という感じの物体がそこにあった。

物体を指先でこそげてみると、ピストンとバルブがこっちを見ていた。やはりサイドバルブ(SV)だった。

ここで再びクランクシャフトの端を指先で回してみた。

今度はくるりと回る。ピストンが上下運動をしていることが見て取れる。

たまたまピストンが上死点あたりで止まった状態で放置されてあったことが良かったのか、シリンダ内壁を目視して壊滅的だと思うような傷は無い。

プラグに火花が飛ぶことを確認したあとで、バルブ周りを掃除することにした。このエンジンの場合、バルブを取り外すきっかけを探すところからいきなり悩まなければならなかった。エンジンのシリンダ部分のちょっと下、クランクに近いあたりを探してみると、2×5cmくらいの金属板がネジ止めされてあるのを見つけることができた。

「ビンゴ」(言い回しが古い)

一対のバルブスプリングが見えた。その中にバルブのシャフトがあって、小さなプッシュロッドがバルブシャフトの終端に触れていた。普段慣れているOHCやらOHVだったら、バルブをスプリングで固定してあるスピルキーをプラグレンチでどつきまわして分解するものだが、こいつの場合そうはいかない。タペット間隔をアジャストするという概念さえ存在しないみたいだ。

口先が細長いラジオペンチでスプリングを圧縮しておいて、小さなマイナスドライバでスピルキーを探し、こじって外すことを2回繰り返した。そしてバルブを上から引き抜いた。

バルブの無いシリンダー部分は、ピストンを少し下げてから、オイルストーンで面研した。シリンダヘッドの裏側、つまり燃焼室はサンドブラスト。バルブはハンドドリルにチャックして、笠がバルブシートに接触する箇所以外のところにこびりついたカーボンを金属用鋸歯で削り落とした。

バルブコンパウンドをバルブの笠に塗りたくってから、エンジンに差し込む。バルブの口径が小さすぎて、わたしが持っている中で最も小径のタコ棒さえ使うことができない。そこでバルブに刻まれてある溝にマイナスドライバをあてがって、すり合わせを行った。

接触させながら回しては、バルブを少し浮かせてからバルブシートに向けて叩きつける作業。音で表現するなら「シューワ シューワ シューワシューワ コン ココン シューワ・・・・・」

コンパウンドをぜんぶ拭ってバルブを定位置にセットする。バルブの笠が上を向いている構造なもんで、今回は上側からCRC5-56をバルブ目掛けてスプレーした。しばらく目視していて浸出している様子もないので、エンジン部分のオーバーホールは再組み付けの段階に移すことにした。バルブスプリングは結束バンドをふたつ使って圧縮する。しかるべき位置に置いてスピルキーをセットしてから、ニッパーで結束バンドを切断。そして動作確認。OK!極めて順調。でもそろそろ飽きてきた。

今度はキャブレター。詰まりが予測される穴をぜんぶキレイにした。 それからエアクリーナーも掃除した。

排気系。サイレンサーの先っちょには、土が詰まっていたから、できる範囲で除去しておいた。スパークプラグは、同等品の在庫がなぜかウチにあったから交換しておいた。

ここまでやれば、理屈の上では、動く。

燃料タンクの内壁には不安があるので、オートバイ用の燃料フィルタをホースにカマせた。電装系を仮組する。つまりカプラーを3組差し込んだだけのこと。

メインスイッチをオンにして、リコイルスターターの紐を巧みに操作して、上死点を探す。加減の良いところでスターターの紐をスプリングの力でぜんぶ巻き戻す。えいっと紐を勢いよく引っ張ると

トトトペト・トトト・・・

当然のことで、サイドバルブエンジンは動き始めた。結構なことだ。

さてジェネレータの生死はいかに?

テスターをコンセントに差し込む。針はAC100Vを示した。その途端、わたしの興味が急に萎えていくのを感じた。燃料タンクの内側を樹脂でコーティングすれば再生完了なのに。

エンジンと発電機の周りに、元がそうあったように外壁でカバーをして、燃料タンクを頂上に据えた。もう一度エンジンをかけて、発電することを確認して、タンクからガソリンをぜんぶ抜き取った。それから物置小屋エルシノ庵に運んで、そこの工具棚に、そっと置いた。

こうしてまた実働するジャンクがひとつ増えた。なんと業の深いことだろうか。

愛ってよく分からないけど
傷つく感じがイイね

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