お話はシンプル。
いつもいつもさまざまなご助力を戴いている師匠先生に、たまには恩返しをしようと張り切ったところ、なんとあろうことか、お礼をプレゼントされてしまったという、かえって気の毒なことになった話がある。それをあえて、ややこしく書くことにしよう。
「助けてください〜。」
泣きをいれるのはいつもわたしのほうだ。無理難題を持ち込んだり、ひどいときにはウチまでのご足労をお願いしたりすることもしばしば。
小さなものだと、粗大ゴミ置場から譲り受けて来たコールマン社のストーブ修理。
わたしが調査するに、燃料コックのOリングを交換すれば必ず直る様子だったのでパーツを取り寄せようとしたところ、Oリングだけの部品供給は無くてAsseyじゃないと出ないということを知るや
「助けてください〜。」
ジャンクだったヤンマーの耕運機のレストア指南をお願いしたこともあったし、ああオートバイだと、台風で海に沈んだW1S-Aのダイナモをクリーニングしていただいた。それから調子が狂ったW3-A改(ヘン)のシリンダーヘッドを再びW1SからW3オリジナルに積戻した際にも
「さらに調子が悪くなったんですよ。助けてください〜。」
「ん〜?左右の連結パイプが組まれていないよ〜。これなら新品キャブでも調子は出ないよ。」
イッパツで看破してもらったこともあった。そのとき不調だった原因は、ヘッドのせいなどではなくて、メインジェットまわりの清掃不足という情けないものだった。
わたしが直してでも使いたいと思ったもののうち、自分の腕だと手に余るということで相談に乗ってもらったことは、かならず良い結果になるということは本当にありがたいことだ。いつも感謝している。
「助けて〜。」
おや珍しい。師匠先生から泣きの携帯電話が。
「Think Padが、絶不調なのよ〜。」
いろいろ調べてみたところ、現象としてはよくありがちなことが幾層にも幾層にも重なって、その結果パソコンが不調に陥った、と思った。
いつだったか特に記憶がないほど以前のことだが、このThink Padに、わたしが手を入れたことがあって、その際、この4項目を提案したことがある。それを守ってくださってそのとおりのやり方でWEBを楽しんでいらっしゃる師匠先生の環境ならばこそと、わたしはがっぷり四つでThink Padの前に座ることにした。これが、IEを使っているわパッチは当てていないわセキュリティは劣悪だわ、なんてことが予めわかっている場合は、手を触れることもなく「販売店に行け」とか「パソコン・レスキュー屋に行け」とか言ったことだろうが、もちろん蛇足である。
さてこのThink Padの最大の問題点は、OSがMe!だったりしたこと、かな??とほほほ。そもそもが脆弱。
ある日突然、ウイルス定義ファイルの最新版がダウンロードできなくなった。前後してフリーズする頻度が上がった。ちょうどその頃、メーラー・サンダーバードに「シマンテック****の2006のダウンロード版は、コ・チ・ラ」なんてのが届いた。そこで、ウイルス定義ファイルの最新版がダウンロードできないってことならば、最新版のこいつを上からセットアップしてやろうと考えたけど、どうだろうアイリー君。ということだ。
それならばやってみましょう、とDLして展開しようとしたら「お使いのOSに対応していません」なんてアラートが。Me!だとサポート対象外になってきているし〜。
ここいらあたりで、真打ち登場(自分で言うのもどうかと思いますが)。
「おらおらおら。2006ぶんの金かえせ」
シマンテック相手に、そんな交渉をしたのを皮切りに、紆余曲折のあと、Think Padのバックアップを作って、ドンとハードディスクを初期化した。それからわたしの家の過剰在庫、Windows2000をひとつ師匠先生に贈呈することにした。さくさくとアップグレードしよう。
設定を復帰させるのにずいぶんと難儀して、昼間のうちにプロバイダやらNTTやらに電話しては、夜に師匠先生のお宅にあがりこんで、ごちゃごちゃと環境をイジクリまわすこと、最初から数えて延べ五晩。当初の予測より手間取ってしまったが、一応は作業完了。
「速いね〜。止まらないね〜。」
いやいや、たまにはお役に立てて、なによりでした。
「お礼と言っては何だけど、メイト90とリード70のどちらがイイ??」
「へ?」
お礼なぞ固辞しようとココロに決めていた。しかし、メイトに90ccが存在しているのかどうか知らなかったわたしは興味本位、現車を見せてもらうことに。
あ。ニュース・メイトだ。ホンダで言うたらプレス・カブだ。
前のオーナーは海沿いに住んでいたようで、スポークやらハンドルやらの錆びが強烈に目立った車体だった。でも、わたしが若い頃に乗っていた郵政カブの印象がとっても良かったので、きっとそれに順ずるかと、どあつかましくニュース・メイトを貰うことにした。しかも自賠責が3年分以上残っている。
「ラッキー。」
子育ては楽しく忙しい。
長女が産まれた頃のわが家は、仕事の都合で母子家庭状態だったから、彼女が乳児だったころの記憶がわたしには無い。次女のときにはそんなことがないように、下の娘に目を向けることをこころがけるうち、彼女は2歳になった。
同様にもうすぐ10歳になろうかとする長女にも、日々真っ向勝負ができる明るい家庭を継続維持しているわけだが、そうすると、オートバイに手がつけられなくなってしまう状況については甘受するしかなかった。いずれ再始動しようと決めて、ぐずぐずとした長いトンネルにわたしは入っていった。
わたしのオートバイは、自賠責保険の有効期限が失効した順に、ガレージに仕舞いこまれていった。その結果、すぐに乗って出かけることができるオートバイは一台も無いという悲しい現象が、すでに一年以上続いていた。
くるくる動いて、メカに不安が無い原付二種の存在がどんなにありがたいか。カーゴの容量がでかいことがどんなにありがたいか。
トンネルに居たわたしのココロを覚醒させるきっかけになってくれていることにも感謝しながら、ヤマハ謹製の4ストを所有するは初めてゆえ小生些かの不安を感じるものであります。(師匠先生んちのパソコン・デスクの右横には大きな書架があって、ThinkPadにファイルを読み込ませているだらだらとした待ち時間の間、ずっと1970〜75年あたりの月刊オートバイ誌・モーターサイクリスト誌を読破していたものですから、言い回しが妙なことになっています)
ちょい乗り50%・通勤50%で概算燃費は40km/lと、パワーの割にはちょいワル。乗って出かけた先々で「おれに譲ってくれ〜。いくらで手放すか?」と言われる不思議なオートバイ。たしかに漁師をやっている彼には便利なものだろうなあ。
いやいやいや、貰い物を売却しようなんて少しでも考えてしまったとは、なんと業の深いことだろう。
後日。小用で師匠先生宅を訪ねた。師匠先生がわたしに尋ねる。
「アイリー君(いまさらながら仮名)、君のホームページ(ママ)はどうやって作っているの?」
「へ??ああ、ボクみたいなプログラマーくずれの人間は、作成ソフトは使わんとですね、字を大きくしたかったら富士通OASYSみたいに「縦倍角」で囲む、みたいなことを直接打ち込んで作るのんですわ。」
むかしのワープロの概念をご存知なので、説明しやすい。
「ブログを始めようかと思って検討中でね。」
「んー。」
わたしは氷の微笑を浮かべた。
「好き」と言わないおまえのことを
息を殺しながら考えてた