耕運機が欲しかった。
その理由は、コラム「素浪な武士にしてくれ」に詳しいところを書くことにしようと思うが、欲しい欲しい、今度ホームセンターやら農機具屋に行ったら、その値段を調べてみよう、そのあとのことはそれから考えようと計画したくらい、耕運機を手に入れたかった。
ある日、近所を散歩していた。
そのとき目に入ったのがヤンマーの小型耕運機。処分するつもりで表に出したということなので、瞬時にその所有権はわたしに移った。
ウチまで運んでからよーくチェックしてみることにした。
ヤンマーMT200だってさ。どっかで聞いたことのあるような名前だ。MTってのは「マイ・ティラー」ということらしい、どういう意味かわからないけど。それから200って、何?
スターターを動かすと、コンプレッションを感じることができた。プラグはスパークした。それではと外見上の問題点を探すと、エアクリーナ・エレメントが無いのと駆動力を輪転爪に伝えるVベルトが無いという程度だった。せいぜい2,000円くらいで直せそうだ。と思った。
思うのは勝手だ。
いきなり燃料を入れて始動を試みたところ、プラグがカブってしまった。ガソリンが燃焼室に到達していることは喜ばしいことだが、その塩梅がよろしくない様子なので、キャブレターの分解清掃を開始する。と、 キャブをエンジンから取り外した時点で、カラカラと小さな音がした。フロート室内で、何か小さな部品が勝手に踊っている。いったいなんだろうと、そこを分解してみた。
取り出した部品は、どう考えてみてもメインジェットだった。こいつが外れていたらエンジンが動くわけもないさ、と所定の位置にメインジェットを収めようとした・・・・ら、エポキシ系の樹脂でメインジェットは固定されてあった、という痕跡を見つけた。何らかの理由でネジ切ったのを樹脂でしのいだのか、またあるいはこのメインジェットは本来のものとは違って口径が小さいものをムリにくっつけて使ったのか、とにかくわたしは混乱に陥った。
「お助け〜。」
師匠先生のお宅にコロがりこんだ。
「なんじゃこりゃ。」
「話せば長い以下省略」
口径が大きすぎるかも知れぬと言いつつも、小排気量車用のメインジェットをいくつか持ってきてくださった。それからキャブ側にタップを切り直し、適当なメインジェットを据えて修理完了。いや〜。ありがとうございます。
自宅に持ち帰ったキャブを本体に取り付ける。ガスケットは自作だ。
わたしの想像したとおり、エンジンはキチンと動きはじめた。
すっかり気を良くしたわたしはすぐに、最寄のヤンマー農機取り扱い店に、エアクリーナ・エレメントとベルトをオーダーした。Vベルトなんか、ホームセンターで売っている汎用安売りモノで良かったけれど、サイズが分からかったし、エレメントは純正品が出るうちにオリジナルを知っておく必要があると感じたから清水の舞台から飛び降りるつもりで見積りを取った。うーむ、約3,000円かあ。
何日か経って、注文したパーツを取り付けた。ベルトはLA-31だってよ。
これで輪転爪に駆動が伝わる。動作確認ということでわが家の玄関先を走らせてみた。おっイイじゃん。調子良いぞ。
早速、妻の実家に隣接する改革中の農地に向けて出発〜!
♪ルンルン
こんなに楽勝だとは思わなかったよ〜。
墾田永年私財法が平成の21世紀にも適用されぬものかね♪
と、ここまでが2005年の春ごろのお話でして、背景は2006年の3月に移動します。
「おかしいなあ。去年の秋にはきちんと動いたのになあ。」
妻の実家の納屋の横で、スターターをひっぱり続けていたわたしは、途方に暮れていた。 どうしてもエンジンから爆発が感じられない。
くそ寒い中で汗だくになっていた。
「撤収〜」
ハイエースに載っけられてヤンマートラクターMT200はエルシノ庵に。
前に動いていたのが、この半年でダメになっているってことは、どういうことなんだろうとか、いろいろ考えるのも楽しいよなあ。
あれ。このエンジンは川崎重工のOEMだ。今はじめて気付いたよ〜。
「そうなんですか かわさきさん♪」
エンジン仕様を記載してあるステッカーのすぐ下に、オイルのレベルゲージがある。なんとなくチェックしてみた。
「えらいたくさん入ってるなあ。しかもガソリン臭いし。」
どうやら燃料コックをオフにするのを忘れていたらしい。タンク内の燃料はキャブ経由を経由して、どぼどぼとクランクケースに流れ込んだんだろうなあ。
そんなふうに現象を思い浮かべながら中身をぜんぶ抜いて、適量のオイルに入れ替えた。
しかし原因がそれだけではなかったのか、エンジンは始動しようとしない。コンプレッションは感じるし火花は飛んでいる。そして相変わらずプラグはカブる。弱ったもんだ。
因業の末、わが家に存在するパーツ群の中から、ホンダ・シャリィCF50のキャブレターを取り出した。口径と固定ネジのピッチがほぼ同じだということに気付いたからだ。
シャリィのキャブをインストールしてスターターを引っ張った。エンジンが動いた。原因はやはりキャブだったか。
シャリィのキャブをそのまま流用することができればよかったけれど、ここで残念なことに、スロットル・コントロールの仕組みをうまく移行することができないことが発覚した。
このMT200には、エンジン回転数を制御する仕組み、だと思う不思議なレバーが、クランクケースからキャブのスロットルに向けて延びてある。これをシャリィのキャブにうまく引き回すことができない。だめだ。何か良い手はないか??
悩んでいるうちに何日かが過ぎた。無駄な日々だった。わたしはスッパナやドライバから鍬に手を持ち替ることにした。
昨年改革した農地のうち、だいたい30坪に向けてわたしは鍬を打ち続けた。逆行性農夫病だ。おおむね満足ができるところまで耕すと、ほとんど一日がかりの仕事になってしまった。辛い。しんどい。これもカルマか。
うーむ。これはキツい。次の繁忙期までにはぜーったいに修理するぞと決意しながら、筋肉痛と数日闘うことになった。
「師匠先生。こんなことがあったんすよ。」
「カワサキの宿命かも。バリウスかザンザスだったけど、燃料コックが負圧式のやつで、エンジンを前傾気味に積んだやつのガソリンが、ちょっとした保管中にぜんぶクランクケースのほうに流れ込んだっちゅう車体を知っている・・・・・。」
「あれ。」
またまた近所を散歩していたとき、背景は2006年の6月、くそ暑くなりはじめたころである。うちのMT200とほとんど同じサイズのヤンマー製耕運機がやはり処分されようと・・・・・・。
所有権はやはり瞬時に移動することに。
こりゃあいいワ。ずいぶん現行モデルに近いよ。リコイルスターターには「らくらくスタート」みたいなステッカーが貼ってあるし、始動が軽いってことなんだろうなラッキー。
どれどれ。確かにスターターは軽いなあ。プラグに火花は???あれスパークしないなあ。プラグホールに指で栓をして「らくらくスターター」を引っ張る。あれれコンプレッションを感じないなあ。次の休日に分解してみることにしてその日はMT32(だったかな)を仕舞った。ちなみに10年くらい前のオール・ヤンマー製耕運機らしいことが、その夜に行ったWEB検索でわかった。
次の休日だった。 小一時間ほど作業したころ、この耕運機が捨てられた理由のすべてを悟った。
コンロッドが破断していた。そりゃあスタータが軽く引っ張れるわけだよ〜。しかしここが壊れるということは、設計品質が低いのかよっぽどひどい使われ方をしたのか、想像しただけで涙が出てきた。
ヤンマーに部品代を問い合わせた。ていねいに教えてもらったが、どうも20,000円をオーバーするみたいだ。ギブアップ。
でも、キャブとかの部品取りとして使えるかも知れない。どれ、さっそく。
やはり現代に近い機械だけのことはある。MT200のキャブとほぼ同じボディだけど、フロート室にドレーンがついている。これは使える。
そのキャブから燃料を抜き取るための仕組み一式と共に、MT200に取り付けた。
始動が良くなった。駆動力もぐんとアップしているように思う。キャブってやっぱり大事ですね。やれやれ。
「搬入〜」
ハイエースに載っけられてヤンマートラクターMT200は、再び妻の実家に。
カワサキエンジンの耕運機、ここに復活。 2006年秋の繁忙期に間にあった。これで筋肉痛関節痛から逃れることができたよ〜。
あっけないキスの後 ヘッドライトを消して
猫のように眠る月を見た