確かに、一度くらいは腕前の良い内燃機屋さんのもとを訪ね、おれの要望をお伝えしたうえで、腰下を仕上げたエンジンを所有してみたいものだが、今のところ、そして この「誰の号」では、その予算を捻出することができない。
さて、「誰の号」のクランクシャフトだが、クランクケースを割ったとき、一次減速装置側=つまり回転方向左側=のクランクシャフト・ベアリングのアウタ・レースが一次側クランクケースから抜け、シャフト側に残った。以前に割った「貰い物腰下W1E」でも、それは同様だったし、ケインさんがかつて実況中継したクランクでも、やはり左のクランクシャフトベアリングは、シャフト側に残っていたことは記憶に新しい。
この妙に大きなベアリングを シャフトから抜き取るのには、熾烈を極めた。なにしろ、ウチにあるギア・プーラでは、アウタレースまでには爪が届かないのだった。
岡山県には、ストレートさんとかアストロさんなどに代表されるリーズナブルプライスな輸入工具屋さんが無い(2002年当時)。やむなく近所の工具屋さんでギア・プーラの値段を調べると、おそろしく高価だった。でも、この作業は どうしても今日のうちにやってしまっておきたかった。
おれは、洋服タンスから 首まわりが くたくたになったヘインズのシャツを一枚抜き取った。クランクそのものを この新品ウエスに包み、それから大きくて厚みのあるスポンジシートで巻いた。
その塊を、今では利用不可になった不良在庫「黒い不透明なゴミ袋」に入れ、そ〜っとジムニーの助手席に置いた。
「師匠先生 こんにちわ〜。ギアプーラを貸してください〜。」
「いや アイリーくん! うちにも そのサイズは無いのだよ〜」 と、師匠先生は やおらガスバーナを取出して、ベアリングのインナーレースあたりを温め始めた・・・・・。
それからタイヤレバーを二本取出して、クランクウエイトとベアリングの間に差し込んでコジると、あっさりベアリングはシャフトから抜け落ちた。と 同時に、おれの目からもウロコがパラパラと剥がれていったのだった。
ああ、どこまでも奥が深いなあ〜。先人の偉大なるテクニックを拝見するたび、脱帽しきりのおれなのである。