ほとんどのオートバイエンジンは、シリンダ内部でのピストンの上下運動をコンロッドを介し、クランクの回転運動に変換して動作する。それは当然の認識かも知れない。
では、1966 W1〜1974 W3-Aに使われたW1Eエンジンについて、当然の認識を再確認するべく、記述してみることにしよう。
注意:予想以上に長文になってしまった。だからW1Eをよく知っているかたには時間の無駄になるので、読まないで欲しい・・・・デス。
W1Eは 4サイクルのエンジンである。
ピストンを上下運動させるために、シリンダ内部では、燃料の混じった空気(混合気)を吸い込む・混合気を圧縮する・点火爆発させる・爆発したカスの混じった空気を排出する、という、おおまかに4つに分類される工程を連続して行う。
いきなり 4サイクルという文言を使ってしまったが、もうヒトツの代表的な形式「2サイクル」については、いつかエルシノアのコラムでゆっくりネタにしてみたいので、ここでは割愛したい。
さて4サイクルエンジンだが、混合気を吸い込む・爆発カス混じりの空気を排出する、といった工程を処理するため、密閉されたシリンダ内部に、弁(バルブ)がそれぞれの目的で設けられている。
混合気を吸い込むのは、吸気弁が開かれてかつピストンは下方向に運動しようとしている時に行われる。このとき ピストンの負圧によって キャブレターから霧状の燃料を吸い込む。
やがてピストンの運動が上方向に変わることになるが、その寸前で吸気弁は閉じる。
ピストンの運動が上方向になるということは、シリンダ内部は理論上密閉されているので、ピストンがシリンダ内部の容積が小さくなり、先程吸い込んだばかり混合気は、より爆発させやすい「濃密」な混合気に変化していくことになる。
ピストンの上方向への運動が頂点に達した場所を、「上死点」と呼ぶ。
その位置に達する寸前で、シリンダーヘッドに仕込まれているスパーク・プラグに、火花が飛ぶ。
ここで爆発がシリンダー内部で発生し、そのエネルギーはピストンは勢いよく下方向に押し出す。
爆発エネルギーで一番下まで押し下げられたピストンの運動が、再び上方向へと変わるとき、今度は排気弁が開く。
そしてシリンダ内部に充満していたガスが、ピストンによって押し出されたとき、排気弁は再び閉じる。
その後で再び吸気弁が開いて、シリンダ内部に新しい混合気が充填されるが、この一連の動作を延々と繰り返すのが、4サイクルエンジンなのである。
シリンダ内部でのピストンの上下運動とその意味合いについては、これでだいたいのご理解を得たと思うが、続いては弁(バルブ)を制御する機構について記述したい。
W1Eは、OHVエンジンである
OHVとは何か、ということについては後述することにする。
W1Eのクランク軸には、その左側にクラッチに動力を伝えるためのギアが取り付けられてあることについて既に記述しているが、もう一方の右側端には、エンジンそのものを制御する役割を持つ、様々なアナログ・メカを動作させるギアが、取り付けられてある。
この制御系アナログ・メカを、アバウトに分類してみると、動作系・発電系・潤滑系の三系統に分けることができる。
ではまず動作系について。
クランクシャフトが1回転するとき、それに噛合うアイドルギアが1/2回転する。このアイドルギアは、さらにカムシャフトギアに噛合って、それを回す格好だが、アイドルギアとカムシャフトギアの歯数は同一となっている。
そしてカムシャフトギアは、コンタクトブレーカーギアに噛合い、これを動かしている
カムシャフトギアとコンタクトブレーカーギアの歯数は同じである
つまり、クランクシャフトが2回転するとき、カムシャフトギアは正転で1回転し、コンタクトブレーカーギアは逆転で1回転することになる。
コンタクトブレーカーギアについては、後述することにして、ようやく弁を作動させる「カムシャフト」の話題に移る。
カムシャフトギアに直結された軸であるカムシャフトには、カムが付いている。
W1Eの場合、そのカム突起は4つある。
なぜ4個なのかは あとでわかることなので割愛したい。
この4つの突起「カム山」は、それぞれ独立した位置にあって、シャフトが回転するときに、シリンダー後方側面に仕込まれた「タペット」という部分に接触するようになっている。
タペットは、やはり4個すべてが独立して動作する部品で、カム山と接触するたびに押し上げられ、タペットそれぞれに差し込まれた「プッシュ・ロッド」と呼ばれる20cmくらいの棒状部品を動かす。
このプッシュロッドのもう一方の端は、「ロッカーアーム」の一端にあるお皿状の箇所に、ハメこまれている。
ちなみにこのプッシュロッドは、シリンダ・シリンダヘッドを貫通する穴の中を通り、エンジン頭頂部「ロッカーケース」の中へ伸びるようになっている。
ロッカーアームはシーソー状態の部品で、弁を開閉する重要な役割を担っている。
弁(バルブ)は通常時、2本のバネの作用で強固にバルブ・シートに押し付け、シリンダ内部を密閉しているが、ロッカーアームがプッシュロッドで押し上げられると、シーソーの理屈でバルブの終端を強く押し下げる。
これによって弁が開放されるのだが、W1Eの場合は二気筒で、それぞれのシリンダに吸気バルブ・排気バルブが1つずつあり、ロッカーアームはすべて独立して動作するようになっているから、ロッカーアームは やはり合計4個存在することになる。
整理してみよう
ひとつの気筒だけを単体で見た場合、クランクが2回転する間に カムシャフトは1回転するので、それに伴って 吸気バルブが1回開き 排気バルブが1回開くようなカムが設けられていることになるのである。
以上、カムシャフト→タペット→プッシュロッド→ロッカーアーム→バルブ、という一連動作を説明してみた。
シリンダヘッドの上側にバルブがある4サイクルエンジンが、OHV形式であり、W1Eなのだ。
ちなみに、OHVはオーバー・ヘッド・バルブの略である。
ところで、EJやZ1でもバルブはヘッドの上に位置しているのだが、OHV形式とは呼ばない。それぞれOHC(オーバー・ヘッド・カムシャフト) DOHC(ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ と呼ばれる形式で カムシャフトがシリンダヘッドより上にある構造なのだ
これで OHVエンジンの場合 カムシャフトはシリンダヘッドより下にあるということが、呼称から見た消去法でも想像できることになる
それなら OHC形式などは オーバーヘッドバルブ アンド カムシャフト と言ってくれたなら 判りやすかったかも知れないが、カムシャフトが シリンダヘッドの上にあるということは 自動的にバルブもヘッドの上にあることになるのだろう、そのことは省略されている
オーバーヘッドバルブ と わざわざ「ヘッドの上側にバルブがあるんですよ」と断っているのには、理由がある
シリンダの横と表現するのが適切なのか それともシリンダヘッドの下というのが良いのかは判断が付かないのだが、とにかくその場所にバルブを持つ SV(サイドバルブ)という形式の4サイクルエンジンも かつて存在していたのだ
DOHC・OHC・OHV形式のシリンダヘッドには、ともに半球状の燃焼室が 一般には見られるのだが、SVの燃焼室の形状は「前方後円墳」のようになっている
円墳部分は もちろん燃焼室なのだが、それに続くような格好で、方墳の所に 吸気排気のバルブが、シリンダに生えているのだ
もちろんロッカーアームなどは存在しない プッシュロッドが直接バルブを押し上げるのだ
シンプルなメカなのだが、前方後円墳状の燃焼室が その気筒に対して大きくなりすぎるため、高い圧縮を稼ぐことができかったそうだ
そのため、排気量あるいはエンジンの重量に対して、低出力であったことが知られている
そこで 大きな出力を効率よく得るために燃焼室は半球形状になった
また プッシュロッドでは高回転時に伝達ロスが発生するのを嫌い、カムシャフトをヘッドの上に置き、チェーンあるいはギアで駆動させるようになった
やがて さらに高回転時の安定した出力を得るために、吸気排気に独立したカムシャフトが設けられたり、一気筒あたりにあるバルブの数も増加してきた というのは よく知られるところであって、その進化は以下のようになる
うわ 2と3 4と5 が、それぞれ逆かも知れない もう覚えていない・・・(←ボケる前に調べろよ<わし(^^;)
くどくなってしまったが、W1Eは OHV形式の360度クランクの2気筒エンジンである
片方のシリンダが掃気しているとき もう一方のシリンダは混合気を圧縮するようになっている
要は、片方が点火爆発しているとき、反対側は吸気している というように、常に同じ高さで上下するピストンは、まったく別の作業を継続する
片一方が クランク1回転分 先の工程を行っているのだが つまり位相が360度なのである
今度は、後述すると言った「コンタクトブレーカーギア」について
コンタクトブレーカーギアの中心軸は、スパークアドバンサーのシャフトが、スピルキーで位置決めされ、ナットで固定されている
このスパークアドバンサーのシャフトは、2個のベアリングで軸受けされているが、この部品が持つ重要性は このことで自然に理解できると思う
スパークアドバンサーの終端にもまた カムが施されてある
このカムには、平時、コンタクトブレーカーのスリッパー部が、板バネの力で押し付けられている
カム山にスリッパーが乗り上げたとき、やはりシーソーの理屈で、コンタクトブレーカーの接点が開くことになる
接点が開かれると、それまでコンタクトブレーカーに流れていたバッテリからの一次電流が遮断され、イグニッションコイルの中で 高圧に上昇されたニ次電流が発生する
この高圧電流が スパークプラグに供給されるわけだが、なぜニ次電流が発生するのか という理屈は 電装編で細かく説明したいと思う
これを文系的に説明するのは なかなか難儀なのである
さて、カムシャフトギアとコンタクトブレーカーギアの歯数は 前述した通り同じなので、クランクが2回転すれば、コンタクトブレーカーギアは1回転する
つまり、コンタクトブレーカーが1個ある単気筒のエンジンの場合、カム山が1個あれば、火花を飛ばすことができるわけだが、2気筒のW1Eにあっては次のようになる
コンタクトブレーカーが1個の場合、スパークアドバンサーのカム山は2個存在しており、クランクが2回転する間に2回の爆発を発生させる構造になっている
つまりこれは 排気バルブが開いて掃気中にあるシリンダにも、スパークがあることになる
また、コンタクトブレーカーが2個あるW1S−A以降のW1Eでは、スパークアドバンサーのカム山は1個となっている
クランクが1回転する間に、2個あるコンタクトブレーカーのうち、どちらか一方が開くという格好で、混合気を圧縮しているシリンダ側だけに、火花を供給する
スパークアドバンサーという文言が突然出てきたが、乱暴なことに説明しないままであった
何かをアドバンスするから、アドバンサーという名前が付けられているのだろうということは、容易に想像がつくところだと思う
「上死点」については前述したが、1000rpm未満で運転している場合では、圧縮中のピストンが上死点に到達する5度前のところで プラグがスパークするようになっている
これによって炎がシリンダ内部を伝播して爆発し、最大圧力を得たピストンは押し下げられる格好になる
しかし、3000回転を超える中高回転域においては、点火タイミングが上死点前5度では、出力が十分に得られなくなることに陥る
その背景は、プラグがスパークして圧力を得る際 クランクの回転が速すぎるせいで、炎の爆発による最大出力に到達したとき、ピストンはすでに下がり始めている状態にあるので ロスが発生するのである
言い換えるならば、燃焼室とシリンダとピストンの容積が再び多くなっている位置で、爆発が最大になっているということは、せっかく圧縮した混合気を 効率良く燃焼させていない ということになるのだ
そこで、クランクの回転速度が上昇するのに同調して、プラグに火花を飛ばすタイミングを早くしてやることで、燃焼効率を上げ その結果として、安定した出力を得ることが可能となるわけだが、この行為を進角と呼ぶ
前述したサイトバルブエンジンが主流の頃には この進角を手動で行う車両が大半だったと聞くが、近代的エンジンW1Eには、自動的に点火タイミングを変化させるスパークアドバンサーが採用されているのである
W1Eで使われたアナログ式スパークアドバンサーは、遠心力を利用した機構になっており「ガバナー」と呼ばれる
これは、シャフトが回転すると それに備えられたオモリが 遠心力の作用で開閉する仕組みになっていて、2個のオモリと2個のスプリングが、スパークアドバンサーの終端にあるカムの位置を 最大☆★度まで可変させる
発電系のおはなし
W1Eには、クランクが1回転すると 1/2回転するアイドルギアという歯車がある
このギアには★★個の歯があって、チェーンを駆動する
このチェーンは ★個の歯を持つダイナモギアにつながり、ダイナモローターを回転させる
ダイナモとは、夜間に自転車を走らせるとき、タイヤの側面に押し付けて動かしたあのダイナモと同じ理屈のもので、直流を発電する仕組みである
ここで取り出されるエネルギーは、クランクの回転に正比例し 回転が低いときは小さく、回転が高いときは大きくなるわけだが、得られるエネルギー量が、必要以上に大きすぎた場合には、電気回路が焼失する恐れがあるため 電圧・電力を一定の上限範囲内に整える必要がある
そこで「整流器=ジェネレータ」が その役割を果たすわけだが、整流器の内部には、様々な抵抗器やスイッチが組み込まれてあって、ダイナモからの電気の入力のほかに、バッテリーからの電気の入出力も制御するという機能を持っている
つまり、エンジンが低回転あるいは始動していないときには、バッテリーに蓄電されたエネルギーを利用するように動作し、またエンジンが1500回転を超えると ダイナモで得られたエネルギーを バッテリーに蓄えられるように流す そしてまた、バッテリーの充電量が十分になったときには、その電気の流れを停止するという役割もある
こうして エンジンが稼動するあいだ、発電・蓄電はくりかえされることになる
潤滑系
クランクには、もう一つの歯車が固定されている
これで、すぐ隣にあるオイルポンプ・ギアを駆動し、このオイルポンプ・ギアのシャフトは、トロコイド式オイルポンプのインナーロータに直結している
インナーローターが回転すると、それに連動してアウターロータも回転するのだが、そのインナーとアウターとの隙間は、回転によって常に容積が変化している
この容積変化を圧力に変換し、エンジンオイルは、オイルタンクから吸引されたり、エンジン内部を潤滑したり、オイルタンクへと押し戻されたりすることになるのだ
エンジン内部の潤滑だが、3系統に分類される。
1 ポンプから押し出されたオイルは、クランクケース下底の孔を通って、タイミングギアケース合せ面の底部にある穴へと移る
タイミングギアケースには、クランク右軸端を軽く差し込む窪みがあるが タイミングギアケース底部の穴は、このクボミに繋がっていて、クランク軸中央にある潤滑経路へと、オイルを押し込む
クランク内部を通ったオイルは、クランクの大端部を潤滑した後 クランクケース内部に自然落下する
2 ポンプから押し出されたオイルは、カムシャフトとアイドルギアを潤滑する
そしてカムシャフトを潤滑したあとは 細いパイプを通って、エンジン頭頂部へと運ばれる
T字状に分岐された細いパイプは、ユニオンボルトを介して、吸気・排気それぞれのロッカーアーム・シャフトに連結される
2本のロッカーアーム・シャフトには それぞれ2個の孔が存在し、つごう4個のロッカーアームとシャフトとが摺動する面を潤滑し、ロッカーアームを伝ってアームの両端を潤滑した後、シリンダヘッドに自然落下する
それからシリンダヘッドで バルブ終端・バルブスプリング・バルブ終端まわりの一部を潤滑していくオイルなのだが、排気側は それぞれシリンダヘッド・シリンダに設けられた二つの孔から、クランクへと自然落下する
また吸気側は、プッシュロッドが通されている穴の中を、落下していく
このオイルはタペット部に設けられたオイル溜りを満たし、その剰余は クランクケースに落ちるのである
3 クランクケース内部では、ピストンが上下する度 容積が連続して変化するが、クランクケース上部にある、ブリーザー孔によってほぼ大気圧に保たれるようになっている
クランクあるいはエンジン・ヘッドの潤滑によって、クランクケース内部は霧状態のオイルで満たされる
この霧状のオイルが シリンダ内壁に付着して、ピストンとシリンダの間を潤滑するが、ピストンリングによって掻き落とされる 特に 上から3本目のリングで掻かれたオイルは、ピストン外周に多く開いている小さい孔から ピストンとコンロッドを結ぶスモールエンドを潤滑し オイルパンに落下する
1・2・3の経路でオイルパンに集められた潤滑油は、やはりオイルポンプの働きで オイルタンクへと戻っていく
こうしてW1Eは 内燃機として 動作するのである
うひー 疲れたよー
ジブンのコトバでW1Eを説明するのって たいへんだー
ただ、これから始まる「大分解」「大掃除」「バッチリ組付け」をヤルにあたって、コレを書いておかないといろいろ説明が不足しそうなので 先に準備してみました
題して 〜おおきなお世話だ!! アイリーがお送りする文系W1E講座〜 でしたー