プレゼント

腰下W1E

Feb 04,2001

たしか1991年のことだったと記憶している。

おれの家の前に、鮮やかなターコイズブルーのボディを纏ったホンダ・トゥデイが停まった。

「ケンちゃん(仮名)に、ウチのダンナの大切なモノをあげるワ!」(山口百恵風味♪)

おれのことをケンちゃん呼ばわりするのを、おれは、妻とこのヒトにしか許していないが、まあそんなことはどうだっていい。

彼女は、そいつを指して「重いからキミ自分で運びなさいよ」と言う。

おれは、ナビシートの足元部分にコロがされていたそいつを持ち上げた。

ずいぶん重い物体だった。

これが「貰いもの・首なしW1E」との出会いだった。

なにかあったときに使ったらいいよということだったが、こいつをどんな具合に使ったら良いのか、そのときはなんとも思わなかった。

ましておれは、ダブワン歴4年のシロウトさんに過ぎなかった。こいつの価値は見いだすことはなかった。というのも、当時おれのW1S-Aは、ポイントなどの交換を、ショップでやってもらったばかりで絶好調だったし、別の車体から部品を移植させてまで乗りつづけることなんてないさ、と漠然と考えていた。

シロウトのおれは、こいつをとりあえず納屋に放り込んだ。

それっきりになっていたことは、拙サイト内コラム「彼のオートバイ」「彼のオートバイ2」で既に発表している。つまり安直なる焼き直しネタだったりするのだが、その点にはツッコまないようにお願いするものである。

おれがいつも作業台にしているテーブルは、さぬきうどん大学時代にツブれた喫茶店から貰ってきたものだ。あの頃は勉強するのに使った。宴会で使った。メシも食った。

今ではシャコ万で板をくわえたり、グラインダを固定したり、塗装台になったりと大活躍してくれているが、風雨にさらされてボロボロとなってしまっている。

それでもおれは捨てない。脚の部分がこんなに頑丈なのに廃棄するのには忍びない。

今日はこんな感じで使ってみた。

地面がわの台座に、パンタグラフジャッキを2台、平行に置いた。

それぞれのジャッキの上に、カマボコ板をボンドで貼り付けた。

クランクケースを、タイミングギアケース側を上にしてカマボコ板に載せた。

クランクシャフトに、パイプを差し込んだ。

天板側の台座とパイプの間に、また別のジャッキを挿み込んだ。

これでうまくクランクが抜けるはずだった。

がしかし、パイプの素材が柔らかいせいなのか、腰砕けになってしまった。

おれのW3-Aをオーバーホールしたときの廃部品「スイングアームスリーブ」を2個繋げて使った。

すると今度はうまく面圧が加わったのかジャッキを稼動させると、ぐうと音をたてながらクランクが下方向に滑り始めた。

ここでクランクを地面側の台座に直撃落下させては、クランクの命がだいなしになる。あわてて、すべてのジャッキにかかる圧を解除し、クランクを作業台の上に移動させた。

ここまでくれば、スリーブを差したままの状態で、軽くプラスティクハンマーにてスリーブを打突すると、クランクは外れた。

むろんおれのところには、Vブロックなどないわけだが、このクランクはどう見ても、生きているように思うがどうだろうか。

今度はきちんと組むことができるかどうか練習してみたい。

そういえば、もうひとつ試しておきたいことがあった。

以前に、クランクケース内部を灯油などで洗浄したとき、タイミングケース側のクランク軸にあるオイルラインに、パーツクリーナやキャブクリーナを通したあと、自転車用空気入れでエアを通したが、それは有効だったのだろうか?

とりあえずクランクを横に置いて、CRC5-56を吹いてみた。じわりとビッグエンド部に滲みはじめるのを見たとき、おれは安堵した。

続いて、クランクそのものに仕込まれた遠心フィルタの役目をしているラインの蓋を外してみることにした。真鍮製なのだろうか材質がかなり柔らかいが、そのわりには、マイナスネジが切られていた。予想以上に長い「イモネジ」だった。

不覚にも、アタマをすこしナメてしまったが、ネジは抜けた。

おそらくは、ここにいくらかのスラッジが滞留しているだろうが、いきなり掃除してしまっては勿体ない おれはそう思った。

爪楊枝でホジるにことにした。

つい今しがたまでネジがあったところに、固いモノがあった。砂消しゴムくらいの固さか、爪楊枝が刺さらない。

パーツクリーナを使って少しだけ溶解してみた。これでようやく楊枝が食い込んだ。

穿ってみた。すると、真夏の簡易舗装から滲むコールタールをイメージさせるような物体が、どんどんと出てきた。掘り進むにつれ、爪楊枝では長さが不足することに気付き、ひっかき棒を焼鳥の串に替えてみた。

推察するに、軸の中央から2cmくらいのあたりまで、このスラッジは堆積していたようだ。

だれを乗せてどこを走ったエンジンなのかは、よくわからない。ピストンに2サイズオーバーのものが入っていることを考えても、かなり消耗したものだろう。ただ運良く、クランクそのものが破壊されるまえに、シリンダヘッドなどの部品取りとして、エンジンがその動きを一切止めたことなのかも知れない。

あらためて、パーツクリーナを通してから、CRC5-56を通した。エアブローをしてやって、最後にゾイルを流した。

内燃機屋さんを訪ねてみようと思う。

こいつのクランクが生存していることが確認できたなら、バランス取りをお願いしてみよう。

願わくば、この腰下をおれの2台のダブルのどちらかに載せてみたいもんだ。そして、これに組まれていたギアの全てを、WPC加工するのも面白いかもしれないと思う。

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