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嘲笑の育て方

Sep 30,2009

前のコラムでシルクロードやらCB250RSやらのギア比について話題にしたのですが、その根拠集めの取材をしているときに気付いたことがあります。

ドリブンスプロケットについて、AFAMのウェブサイトから製品の適合表を読んでいたときのことです。その適合表によれば、当コラム「短距離ライダーの憂鬱」でやたら話題にのぼることのあるXL250SとCB250RS-ZとCT250SとXL250Rは、後輪ギアの規格が同一だと知りました。歯の数(丁数)はもちろん選べるわけで、何丁のものを使うかはお好みでどうぞということになりますが、要するにハブに取り付ける6本のボルト穴について、数と直径と間隔が共通なのです。ちなみに1985年頃にはやたら走り回っていたVT250も、この規格のスプロケットで45丁だそうです。それから車名は失念しましたが、最近のホンダの250ccでこのスプロケットを使うのがあって、42丁が標準仕様なのだそうです(XLディグリーだったっけ)。

というわけで、もしもシルクロードのリアホイールハブを使うのなら、純正スプロケットの流用で42〜53丁まで選択肢があるということですね。中古品を格安で引っ張ってきて、マッチングを試すこともたやすくできるというものです。

そうしたなかで、はてどうしたものかと首を傾げるのがCB250RSのドリブンスプロケットでした。わたしのシルクロードの後輪一式にはCB250RSのパーツを組んでありますが、スプロケットは一連のものとは規格が違っていて4点止めなんですね。いずれタイヤ交換も必要だし、ハブが黒塗りなのも好みじゃないし、おまけにスプロケットの丁数なんて選択肢が無いし、そうなってくるとシルクロード本来の後輪に戻すかどうかなんて検討すら必要ではなくて、さっさと適当な歯のスプロケットを探してきて、アルミ色のハブに戻したほうが賢明というものでしょう。

わたしにはもうそれほど時間が残されていません。熟考の余地なくVT250の純正中古部品を調達しました。既存の51丁スプロケの上に45丁を重ねて置くと、80年代に一部で流行していた「TLR200トライアル場まで自走キット」のことが記憶の淵から蘇ってきました。ですが商品名までは思い出すことができませんでした。


ディスクブレーキ化した前輪にしてもCB250RSの流用でしたからやはりハブが黒塗りです。本来19インチだった前輪を18インチにしてあるので、フェンダーとタイヤの隙間が中途半端に開いてしまいます。実はその姿が、好みではありませんでした。好みじゃないなら改修してみればどうかと、CB250RSのフェンダーを掃除しました。その後、タンクを補修したときの近似色の缶スプレーを吹き付けてみました。すっかり乾燥したと判断した一週間くらい後に、ワクワクしながらシルクロードの前輪にセットしてみました。そのときの心象を端的に表します。

「イラッ!」

だめです。好みにあうかどうか、どころではなくて、これはカッコ悪い。あくまでも個人的な感覚ですが、ちっとも軽快じゃないんです。なんと申しましょうか、そうですね、本郷猛がSL350と共に仮面ライダーとサイクロン号に変身する過程を映像化したカットが5つあるとして、その3コマ目の中途半端な状態のような違和感が、どうしようもなくシルクロードの前輪あたりに漂っている気がしたんです。一度そのような印象を持ってしまうと、かつては制動能力の向上を謳ってディスクブレーキに変更したことさえ、疎ましく思えてくるものです。いろいろな手数や新しく調達した部品や、改造のために破壊した部品のことなどを全部忘れて元に戻す方向へと気持ちが向き始めました。「18インチ&ディスクブレーキはボツ!前輪がドラムブレーキだって良いじゃないか」と。笑ってやってください。

そのとき、ゴンゴンゴンと賑やかな音を弾かせながら、エルシノアでナオキくんがやって来ました。休日出勤の途中なのだそうです。

「アイリーさん、深刻な表情で、いったい何やってんスか〜」

「うん。近頃はシルクロードをね、ナニしているところなんだ」

ナニとは、こういうことです。 「ひとつ、神になってみようか、と思ってね」(母をたずねて三千里「ひとつかみの雲」とは違う)

「なんですか それ」

「ダブワンのアレでは、自薦他薦を問わずおおぜいの神が、何人もおわすわけなんだけど、シルクロードのナニってのは、今のトコロ、まだ聞いたことがないからねえ」

「なんか信者の少なそうな神ですね」

「うん、異端を唱えようとかっていうわけでもないけどサ、ま、ニッポンには「八百万の神(やおよろずのかみ)」がおわすわけだからねえ、その裾野にちょっとアレしようかと」

「しかし、シルクロードの神ってのは、なんとも壮大な名前ですね」

「なにしろさあ、ナニってのは、ヘレニズムがモヘンジョダロでガンダーラだからねえ。キック始動が実現している今こそが、アレなんだよ〜」

「それにしても、ナニとかアレとか 大変ですね」

「うん、加齢がねえ」

演説しても唇に泡を溜めず、カレイの匂いをさせず。神になることよりもむしろ、脳みそのアンチ・エイジングのほうがよっぽど難しいことのように思いますが、でも自分で神様を名乗るのも大変なことでしょう。本気で言っているなら、相当の剛の者なんでしょう。近年ならモンスターエンジン、ちょっと前なら 赤塚不二夫に筒井康隆にタモリ。談志師匠も高座で言っていたような気もしますし。

アンチエイジングについては、できることからやっていきいましょう。例えば、会話での代名詞使用を禁止するシバリを設定するあたりくらいからですが、始めてみると案外これまた難しい。わたしによるわたし自身に向ける嘲笑がさらに大きくなっていきます。

ナオキくんからはエルシノアのチェックを頼まれました。いずれ彼が彼自身のためにメンテナンスすればよいでしょうが、もうしばらくの間は、保証期間といえば相応しいのか、わたしが手を出したほうが都合が良いと思っております。

半日ほど時間をくれ、とナオキ君にはわたしのMTBを代車として渡しておいて、エルシノアの現状を把握しようと、近所を流してみました。ふむ、多少ボコボコ言うなあ、とポイントカバーを開いて、点火時期をちょちょいとイジったり、キャブにマイナスドライバを当てて、スクリュをちょちょいとイジったりした後、再びヘルメットを被って、国道に出ました。

わお。自然にホイールリフトするじゃないか。パワー出てるなあ。なんと言っても、おおらかな操縦性で楽しいなあ。きっと前21後18インチのフォーマットがわたしのカラダにあっているのでしょう。イノウエのトライアルタイヤのグリップもわたし好みですし、ブレーキとのマッチングも良いし。

さんざん乗り回して、自宅への帰途に付きました。「エルシノアの前輪って、シルクロードに付かないものだろうかね」無謀なイメージを浮かべながら。だって部品取りのエルシノアの前輪が二式、ウチにコロがっているのです。

一度アタマに浮かんでしまったことは、自分で納得がいくまで消しこむことができないわけで、いろいろと試すことになります。なにしろ部品の在庫はあるのですから。でもその一方で、そんな行動をあざ笑う別のジブンがいるような心持ちになることもありますね。

結論だけ述べます。一筋縄では、この流用カスタムは実現できない、ということがわかりました。三叉ごとエルシノアのものを使うか、あるいはフロントアクセルシャフト軸受け周辺の大改造を行うか、難儀すぎて気力すら湧いてきません。そもそも鉄リムの前輪なんて、肩が抜けそうになるくらい重いし、世代としては5年以上エルシノアのほうが古いし、そんな具合に悪態をついて忘れることにしました。

前輪21インチ化を目指すにあたってホイールの取り付けが同じようなタイプで世代が近いものについて見当をつけるのに、資料やら記憶をひっくり返しました。たぶん、たぶんですよXL250R・XLX250R・MTX200R、このあたりの前輪がシルクロードに適合しそうな気がするのです。ノギス持参で解体屋巡りなどやってみようと思います。それからわたしの妖怪アンテナが三本立つようなウェブサイトが存在しないか調べてみたいと思います。マックに表示された検索と書かれた文字あたりをクリックしてサブミットするだけなんですけどね。

いわゆる悪路に踏み込んで、わしわしモリモリと走破することが若い頃の二十歳代のわたしは好きでした。林道ツーリングも、そこに至るまでの舗装路(リエゾンと呼んだものだ)の旅だっても難なくこなしてくれた、前輪21インチのオフロードバイクの乗り味が好きでした。ちなみに、トライアルは前輪21インチ後輪18インチに限るという規定があったように記憶しています。

そりゃ高速で巡航するツーリングには最適じゃないかもしれないけれど、もしもシルクロードの前輪の直径を大きくするならば、より個人的な好みに合う優れた乗り味になるのかも知れません。ならないかも知れません。初代XL250みたいな雰囲気になるかも知れませんし、見ようによってはTL360を感じることができるかも知れません(虚言癖)。

結局、中古でXLX250Rの前輪一式を手に入れました。\4,000もかかりました。前オーナーのご趣味でしょうか、ぜんたいを缶スプレーでオリーブドラッブに塗装してあります。ところどころ塗膜が剥がれていて、そのままではじつにみすぼらしいものでした。リムに振れが無さそうな点がよろしい。それからスポークにもしっかりスプレー塗装が乗っかっているのでひょっとしたら錆びが少ないかも知れない(逆にサビまみれかも知れないけど)と、ここはひとつ大博打に出てみることにして財布を開きました。

オリーブドラッブの下にある色は、ホイール部分はアルマイト地肌のシルバー、スポークとニップルはユニクロメッキの色、ハブには艶消しブラックが潜んでいるはずです。

では塗装の剥離をしましょう。エルシノ庵の入り口前あたりの地面にブルーシートを敷いて前輪一式を並べました。ガラス容器に取り分けた剥離剤を刷毛で塗りつけます。

缶スプレーで吹き付けられたオリーブドラッブは、最初の一撃でほとんど剥がすことができました。リムもハブもスポークもぶくぶくと泡立って、ウエスで拭き取れば除去できました。特筆すべきはスポークで、けっして良いコンディションだとは言いませんが、激しく錆びついている様子でもありません。磨けばキレイになるのかも知れません。この博打はそこそこの当たりを引いたみたいです。

ハブとブレーキパネルの艶消しブラックは、しっかりと焼き付け塗装されてあるだけのことはあって、一撃で一掃することはムリみたいでした。こういった箇所は過日に塗料屋の社長さんから教わったやりかたで、塗装膜を破壊したいと思います。

近頃都市部では有料化されつつあるスーパーの買い物袋、田舎では厚みが無くなって強度不足からすぐに穴があくスーパーの買い物袋を何枚か用意しておきます。剥離剤を塗ってすぐ、ブレーキパネルなどの小物は袋に入れ、薬剤の蒸散を防いでかつ浸透を促進させます。スポークを外すならば小物になって袋に入ってくれるはずのハブですが、分解も再組み立ても面倒なので、そのまま剥離剤をべっとりと塗ってから短冊状に切ったスーパーの袋をぺたぺたと貼り付けていきます。ハブ全体を覆ったところで、ホイールぜんぶを生ゴミ収集袋に収めます。今では使用禁止になっている黒いゴミ袋は、こんな機会でもないともはや消費することもありません。

一晩寝かしました。

袋から取り出して、状態の変化を確認してみます。艶消しブラックの部分を爪で突付くと、塗膜が柔らかくなっています。ウエスで拭き取ることができるほど脆弱ではありませんが、例えばクルマのボディに貼り付けていたステッカーを剥がすときくらいの固さになっています。使い古しの割箸や焼き鳥の串などで、ぺりぺりむりむりと剥がしていきます。アルミ鋳物の色が見えてきました。木や竹で落としきれない部分は、再度の剥離剤攻撃にまわします。あまり固いもので擦ると地肌が傷ついて、あとで磨きこむのが面倒なので、ここはヒトツ我慢です。ガマンができるなんて、わたしも成長したものですなあ。


フロントフェンダーは、ダウンのほうがシルクロードには似合うのかなと思いました。エルシノ庵には、21インチ前輪用のダウンフェンダーがひとつ在庫されています。このフェンダーのことを語るには、イーハトーブとの別れを話題にしなければいけません。

学生時代に乗っていたイーハトーブTL125改RSC175ですが、そのイーハトーブは下宿の駐輪場からある日忽然と消えたんだ、ってことが急に記憶から蘇ってきました。あの時の悔しさが、今頃になっても込み上げてきます。ちくしょう。

TY250スコティッシュを手に入れた直後に、イーハトーブの乗り潰れ具合があまりにハゲしかったものですから、前後のフェンダーだけでもキレイなのを付けてやって、それから売り飛ばそうかと思いました。バイト代を遣り繰りしてフェンダーを買ってですよ、さあ取り付けようと思った矢先、車体が盗まれたのです。ほぼ新品のフェンダーだけが手元に残り、今もエルシノ庵に安置されてたりするわけなのですが、このまま置いていたところで誰にとってもゴミでしかないわけで、こいつらを白く塗ったらリサイクルできるかも知れません。

イーハトーブのフェンダーはご存知のとおり銀色に塗装されています。この塗装の上にいきなりサフェーサを吹き付けても良いのかも知れませんが、銀色がサフに負けてブクブクと溶解したりアバタが出たりすることを恐れて、銀色も剥離剤で落とすことにしました。

あれ?! 銀色を剥くと、下地の樹脂の色は、少し青みがかかった白です。ムリに塗装せず、そのままで使用することもできるのかも知れません。ひと手間省くことができるというのは喜ばしいことです。

素人の妥協点は低いものです。あざ笑っていただいて結構です。

短距離ライダーの憂鬱・失笑編。嘲笑の育て方 終了

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