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リペアエンジンの出来ばえ

Aug 18,2009

踏み込んでも踏み込んでも以知玄人道〜「以知玄人道 再生エンジンのチェック編」


ようやく始動テストができる状態が整いました。テスト用のフュエルタンクを取り付け、バッテリーは原付スクーターに乗っかっていたMF式のものをワニ口クリップで接続しました。あくまでも仮です。バッテリーが無い状態でエンジンを起動すると、電装を痛めることが考えられます。そうした弊害から逃れるのにバッテリー接続は必要な処理でしょう。だってウチのシルクロードにはキックスタータがあるのですから。

テストその1 キックでエンジンが始動できるか

三度目のキックで、エンジンに火が入りました。全部バラバラに分解して再び組みなおしたばかりのエンジンが動き始めるときにはいつも、ココロ踊ります。これは何度やってもいいもので、この瞬間のために分解しては組み立て直していると言っても過言ではありません。

驚くほど静かなエンジンでした。キックスターターを踏んで火が入ったとき、わたしが知っているシルクロードの音ではないと思いました。

まるで寂しくなってしまうくらいに、例のチャッチャッチャ・チャカチャカチャカチャカって音が聞こえてこないんです。もしかしてあのジャワの民俗音楽みたいなノイズってのは、カムチェーンが鳴っているのではなくてロッカーアームがわずかにスラストして踊るときの音なのかしら、なんてことを思いました。コラム前節「8Φのイモネジで閉じた」で紹介したとおりなのですが、シリンダヘッドカバーをオーバーホールしたとき、オイルシールを交換するだけでなくウェーブワッシャーも新品にしました。静かなエンジンになっている要因はそのくらいしか思い浮かばないんですが、きっとそれの影響でしょう。ま、思いつかないだけで、個体差だとか、それともなにか重大な障害の前触れなのかも知れませんけど。

組んだばかりなので、ギャンギャン回してチェックを続けるというわけにもいきません。当面の慣らしは必要でしょう。アイドリングを仮に1,500回転くらいに決めたその時です、アンダーガードからオイルがどくどくと流出していることに気付きました。けっこうな量です。慌ててキルスイッチでエンジンを止めましたが、どこからオイルが流出してきているのでしょう。さっそくチェックしなければなりませぬ。

ボルト4つを緩めてアンダーガードを取りました。パーツクリーナとウエスを使って腰下と床まわりをざっと掃除して、エンジンの下あたりに受け皿を置いてからもう一度エンジンを始動。キック一発。

ふうむ。エンジンの左側、ドライブスプロケットを覆っているカバーのあたりから、どくどくとオイルが流れてきています。ならば、とエンジンを止めてから、今度はカバーを取り外しました。確かにオイルの海がそこにできています。ああ。

不具合がドライブギアの組まれてあるカウンタシャフトのオイルシールにあるなら、エンジンをもう一度割って交換する必要があります。折れそうな心持ちでオイルをウエスで拭い取って、再びエンジンを始動しました。

たしかにカウンタシャフトのあたりからオイルが出てきています。またエンジンを止めてドライブスプロケットを取り外しました。オイルシールとシャフトにパーツクリーナを吹き付けて油分を取り去りました。それからエンジンを始動します。オイルシールの周辺から滲み出るオイルを目に焼き付けて、エンジンを再度分解して組み立てる原動力にするつもりでいました。目を凝らしました。

ありゃあ。シャフトの中央からオイルがどくどくと吐出しています。オイルシールからの漏出などではありません。

「師匠先生、こんな現象ってご存知ないですか???」 ヘシ折れた箇所が変わったココロで、携帯電話を手にするわたしでした。

「そんなところにオイルラインは無いしねえ」

困りました。そこからオイルが流れてくる理由がわからないのですから。組み立ての腕が悪いせいではないことが判明しただけ、気分的にちょっとマシでしたが。

この不思議なオイルラインを塞ぐのに、カウンタシャフトの穴にタップでも立てて、ボルトとアルミワッシャを使った蓋を作ろうかと思い付きました。その作業を始めるにあたって、脳みその中にいくらかの下地を整えておこうということで、CB250RSとXL250Sのカウンタシャフトをガラクタ箱から持ち出してきました。穴を覗くとそれぞれどちらも内部に隔壁があって向こう側は見えません。両方からノギスを差し込んでみると、隔壁の位置と大きさは個体ごとに異なっているみたいです。シルクロードも同様でしたし、エルシノ庵に鎮座しているシルクロード1号エンジンもまた同様でした。四基全部の値が違うなんて…。これもまた仕様なのですか、ホンダさん。

別の日。ガラクタ箱にあったCB250RSとXL250Sのカウンタシャフトを師匠先生のお宅に持参しました。タップ立てなどを含める善後策の相談です。さっそくいろいろな角度からの検証が始まりました。

「あれえアイリーくん(仮名)、XLの軸の中身には、何かナットみたいなものが見えるよぉ」師匠先生はプラスチックハンマーと鉄の棒を持って、筒に差し込んでコンコンコン。師匠先生の掌の中には、不思議な物体がコロリ。

何だ。こりゃ。

金属のキャップにボルトをネジ込んだものがシャフトの栓をしているみたいです。なにか強引な始末をしてありました。

「幽霊の正体見たり〜 XLにも歴史あり(適当修理の)」

シルクロード2号のエンジンもきっと同じような状態だったのでしょう。もしかしてボルトでも叩き込んだらオイル吐き出しは止まるのかも知れません。

師匠先生はCB250RSのカウンタシャフトから栓を取り出すなり言いました。

「これがきっと本来の姿みたいねぇ。しかしとんでもない品質だねえ」

その栓の口金部分を、袋ナットとハンマーで拡張してくれました。シルクロード2号の栓を外からなんとか抜き出してから、外周部分だけを丁寧に叩いて押し込んでみてくれ、緩み止め剤を併用すればなお良し、とのことでした。

鼻息も荒く自宅に戻りまして、シルクロードのカウンタシャフトにある栓の状態をチェックしてみました。細くて長い6角レンチを穴に差し込んで探ってみると案の定、向こう側まで突き抜ける穴を発見。そりゃあダメですワ。

栓の構造と理屈は分かっているので、破壊してでも取り外します。もともと破壊されてあるものですから何ら抵抗感はありません。そして結局、破壊しました。それから栓をセットしました。われながら上手なもんです。

メインスイッチ、オン。キックスターター、レッツゴー。オイルは漏れません。感謝するは、師匠先生。それからドナーのCB250RSの栓、素晴らしい♪

そういや前のオーナーのイシハラさんが言っていたのが、盗難に遭って戻ってきたけど大変なことになっていた、ということでした。このオートバイがオートバイとして存在していることに耐えられないから部品取りとしてキミにプレゼントするよ、と仰ったのはそうした意味も含んでいたのか、と思いました。修理とか障害とかの履歴が不明の中古車ってのは、ものすごく恐ろしいですねえ。うう。何の不具合か存じませんけど、栓に穴が開いてしまって、ピストンが下がったときのクランクケース内部の圧力でオイルが出てきていたわけなのですねえ。

エンジンの仕様書ってものは、メーカーには存在しているのでしょうが、ユーザーが仕様を知ることのできる資料は、実車と取り扱い説明書とパーツリストとサービスマニュアルくらいですか。パーツリストに部品として記載されていないなら、サービスマニュアルに詳細が載っているわけもなく、メーカーとしてはユーザーレベルでそこまで触ってくれるなというか泣き所を露呈したくない箇所っていうか(わたしもあんまり詳しく書きたくなくなってきました。イタズラ食らったらイヤですからね。10円パンチやら錐でパンクなんかよりもダメージ大きいし)

なんていう材質というか、なんていう構造というか。

どうして亭主を脅かす〜(志ん生師匠風味)

テストその2 セルでエンジンが始動できるか

セルスターターのピニオンギアに細工してみたところで実際に火を入れるところまでの確認に至っていませんでした。エンジンはキックスタータで起動できて粛々とマワることまでの確認ができているわけから、あとは本来の姿であるセルスターターでも始動することができるかどうか確認するだけで簡単なことだと思っていました。

スタータボタンを押しました。「カチ」という音だけが聞こえます。原付スクーター用のバッテリ程度の力ではモーターは動かせないのかなと思って、ジムニーのボンネットを開けて軽乗用車のバッテリーからブースターケーブルで電源を取ってみました。スタータボタンを押してみたところ、やはりカチという音だけが鳴りました。モーターは回りません。

動作音が聞こえているということは、スイッチは正常なのでしょう。ゆえにモーターに問題があるのだと思いました。導通などをチェックするためにモーターをもう一度取り出すにはエンジン左カバーを取らなければなりません。なかなかおそろしい構造です。

数日前にやったのと同じように、エンジンオイルを抜き取りました。十数本のボルトを取り外して、引っ張ったり押したりしているうち、モーターを取り出すことができました。

さっそくモーターを分解して内部の汚れを掃除してから、テスターで状態を確かめてみました。いろいろ試したところで特に異常があるわけでもなさそうですから組み立ててやって、スクーター用のMFバッテリーのプラス端子とモーターの端子をブースターでつなぎました。バッテリーのマイナス端子にブースターケーブルをクワえさせて、他方をモーターのケースに近づけます。バチバチと火花が散ったあとでウイーンと滑らかにモーターが動きはじめました。映画「史上最速のインディアン」冒頭のシーンみたいです。どうやらモーターに異常はありません。じゃあ、あのカチという音は何なの、と追いかけていくとソレノイドの動作音でした。となると、モーターに電力を流す仕組みに問題があるのかも知れません。モーターにつながる電線を見ると、プラス電源との間にウインカーリレーくらいの大きさの回路がありました。これにテスターをあててみると何かヘン、どうやらこいつが正常な動作をしていないみたいです。

そういや昔、シルクロード2号を貰ったときにオマケだ、と渡された諸々のパーツのなかにこの部品「マグネットスイッチ」が混じっていたことを思い出しました。エルシノ庵の棚から部品を探し出してきて付け替えました。

スクーター用MFバッテリーをシルクロードのハーネスに仮接続して、モーター単体を動かすことができるかチェックしてみます。メインスイッチをオンにしてクラッチレバーを握り、スタータボタンを押すと、カチと音がしてモーターが駆動しています。その後で今度はクラッチレバーを開放してからスターターボタンを押してみました。スターターは動きません。電装はOKです。左カバーを取り外していますから、たとえニュートラル・ギアの状態であってもニュートラルスイッチが効かないわけで、クラッチを握らないとセルは動かないわけです。つまり正常です。

セルスターター関連を全部元通りに組み直しました。スクーター用のバッテリーを配線してからメインスイッチオン、セルスターターボタンもオン。

聞き慣れたあの音が立ちのぼって、エンジンは始動しました。大成功です。

フライホイールが回り始めたときに、オイルポンプギアを介してキックスターターのギアも回転してしまう関係でしょう。わずかですがデコンプレバーが作動するのを見て、思わず笑ってしまいました。

動作確認テストは完了しました。あとはバリバリ走ってみて、腰上あたりのオイル滲みなどをチェックするだけです。おそらく問題は起きないでしょう。

こうしてホンダシルクロードが元から抱えていた欠陥をクリアするだけでなく、経年変化などに由来する不具合も解消できました。リペアエンジンの出来ばえは、満足できるものです。

ボクの前に道は無い、なんてことはないですけれど、ボクのあとには結構な太さの道はできたんじゃないかな、と思うのですがいかがでしょう。

リペアエンジンの仕様まとめ

シルクロード以外のパーツを使った箇所

  • XL250Sの部品
    • キックスターター関連一式
  • CB250RSの部品
    • 腰上全部
    • クランクケースカバー右(要改造)
    • スパークアドバンサー
    • パルスジェネレータ
    • デコンプワイヤレシーバー(要改造)
    • ミッションのカウンタシャフト軸内の栓(PL記載外部品)
    • クラッチハウジング(磨耗箇所発見のため)
  • 汎用部品
    • セルスタータのピニオンギアにシムリングを追加

※XL250Sのキック関連部品は、CB250RSと同一。作業と部品の手配などの都合で使用したので記載しました。

短距離ライダーの憂鬱・爽快編。リペアエンジンの出来ばえ 終了

短距離ライダーの憂鬱・爽快編。完結です。

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