
ひとり所用でグレイハウンド・ジムニーに乗って、某所に出かける機会があった。そのときの待ち合わせまで、30分くらい余裕があったので、時間潰しに、岡山県下では大型店舗クラスのバイク屋さんを覗いてみた。わたしにはめったにないことだった。普通のバイク屋さんに行くという行為自体が、たぶん5年ぶりくらいになるかのもしれない。
そこのお店では、現在のわたしにはまったく用事のない、そして将来的にもまちがいなくそのままだろうと思われる、きらびやかな1300cc級のオートバイたちが、ずらりと展示されていた。それから大型スクーターに特選中古車の数々。
なにか面白いアイディアはないものかと中古オフロード車のコーナーに立ち寄ってみた。そのとき激痛が、わが身を貫いた。
FTR223とかTWに、スーパートラップ付けてェノーマルのキャブにK&Nのエアクリーナ付けてェ、飽きたもんで叩き売りに出してェ、という道を辿ったとおぼしい何台かの車両が、35万円くらいで陳列されてあった。痛たたたたた。よく考えるまでもなく、わたしがやっていることは、彼らと同じなんだ。痛たたたたた。飽きるところまで含めて。痛たたたたた。
ま、わたしのやっていることには、基本的にウチにある、ありあわせの材料を使ってなんとかしてみよう、という試行錯誤がある。お金の流れだけでポン付けして、それで個性を出すという、なんとも虫の良い、冴えたやりかたなんかとは、プロセスにおいて一線を画しているが、それがおおきなアドバンテージなのだと信じて、冷蔵庫を整理しながら作る焼き飯のごとく、駄文を書き続けることにする。なんのこっちゃ。
ブレーキ。
今わたしはリアブレーキについて思い出しながら文章を書きとめようとしているが、ああ、これもまた憂鬱だった。振り返ると、目頭が熱くなってきている。
ここいらにもなんかいっぱつ余計なことをカマしたれと、わがエルシノ庵に整理・格納してあるちょっとした部品群の前に立った。この行動が、どツボの入り口だったけれど、このときはまだそんなことには気付いていない。
エルシノ庵には、TS200RにKDX200SR、SRX4にRM125などのパーツがある。在庫部品RM125のリア・ウィールには、シルクロードと同じ520/53Tのスプロケットが存在し、またディスクロータが付いている。リアのマスタシリンダやホースもペダルも全部揃っているから、RM125リアブレーキの流用をいきなり考えてみた。
リアキャリパのサポートを固定する方法について、まずシミュレーションする。RMの場合、スイングアームに設けてある突起を、キャリパサポート側の溝に差し込んで固定するやり方のようだ。それならCB250RSのスイングアームに突起を切った貼ったしてやれば勝負ありじゃんということで、バーチャルにはクリア。
それからノギスを持って、アクセルシャフトの直径を測定。径が異なっているけれど、W3の前輪を改造した時のやりかたで解消できるだろう。そうしたことも、わたしはかつての経験からわかる。
続いてチェインラインのことを考えるその前に、マスタシリンダの取り回しについて考えることにした。
「がびーんどびーんはげちゃびーん」
マスタシリンダを組み込むスペースが無い。
シルクロードのアイデンティティのひとつに、アップのエキパイがサイドカバーを避けるようにくねくねと曲がっていることがあるのだと思っているが、ちょうどそこいらあたりにしか、マスタシリンダーを置く場所が見当たらないのだ。
むーん。
リンクを介していったん左側に持っていって、そこでマスタを動かすか。ダブルワンみたいに。
わたしの思考は闇に突入した。
だめだ。気分を変えよう。
CB250RSのリアスイングアームをシルクロード一号にインストールしてみよう。リアブレーキのシミュレーションは、そのあとで再開することにしよう。
シルクロードのスイングアームを取り外す。整備不良かそれとも塩害のせいなのか、左側のスイングアームブッシュは、シャフトに固着していた。つまり、左側のステッププレートは、ピボットシャフトのアタマとダストシールとカラーの間に挟まれたままだ。
ここでわたしは両車のスイングアーム・ピボットシャフトの軸の長さが、ずいぶん違うことを知った。『アルミ鋳物のステッププレートは鋭角二等辺三角形に似た形の厚みのある云々』と考えたとき、瞬時に気付くべきことだったのだろうが、いささかアタマの回転が鈍りはじめている。どうやらそのことを端的にあらわしているようだ。
打ちひしがれた気持ちのまま、所定のパーツを洗浄してグリスを塗りたくって、CB250RSのリアスイングアームをセットした。
上からだらんと垂れ下がっているリアサスペンションの下端を、スイングアームに取り付けようとしたそのときである。
コツン。
嫌な感触と音がした。もう一度。
コツン。
お客さまか?どこがどのように干渉しているのだろう。わたしは音のする場所を特定しようと躍起になった。やがてその原因はわかった。右腕と左腕を連結しているハシゴ部分がフレームに干渉していて、サスペンションを組み付けることが出来る位置まで引き上げることができない。CB250RSとシルクロードでは構造が違うのだ。
この事実に直面して、いくつかのアイディアが崩壊した。シルクロードの部品については切った貼ったをやらないと決めた以上、これでリアブレーキのディスク化はできないことになる。企画はボツだ。
再び本来のものを組み直す前に、ふたつのスイングアームを並べてみた。たしかにいろいろな箇所で長さが違う。
シルクロードにスイングアームを組み戻してから、試しにCBのステッププレートをあてがってみた。すると今度は、スイングアームのタンデムステップを取り付ける突起に、CBのタンデムステップとサイレンサ・ステーを兼ねる部分がモロに干渉することが分かった。
「ふふん。もうこれ以上、温存を前提に考えるのは無理だよ。」
ここまでの愚考に引導を渡すべく、先端部分はグラインダでズバッと切断された。今日のところはその整形について先送りにすることにしよう。ひとまずは機構上の不具合を洗うほうがプライオリティが高い。
こうしてさんざんいろいろなことを経過して、わたしのシルクロードのリアブレーキは、ドラム式を採用することになったのである。やれやれ。
ではリアブレーキの操作。つまりペダル関係はどうなるか?
CBのステップは、鋭角二等辺三角形に似た形で、厚みのあるアルミ鋳物のプレートにボルトオンされている。このプレートがフレームにボルト止めされるのだ。それからついでに、タンデムステップのステーとしての役割も担っている。右のプレートにはブレーキペダルのシャフトを通すスリーブが打ち込まれてあるし、左のプレートはシフトペダル・リンクの支点となるステーが延びていたり、サイドスタンドを固定するための穴があったりする。
いっぽうシルクロードは、だいたい正三角の形状をした3mm厚さの鉄板が、ステッププレートになっている。サイドスタンドはフレームから出ているし、ブレーキペダルの支点は、フレームと右側のステッププレートの間にボルトで止める構造になっている。それからタンデムステップは、スイングアームに直付けされてある。
現物を分解して比較しながら、ずいぶん構造が違うもんだと思った。
シルクロードに取り付けたキックペダルを踏み抜くために、CB250RSのステップをなんとか流用してみようと思っていることは前節で書いた。 しかしわたしは、なんとも残念なことに、シルクロードにCBのステッププレートが、ポン付けできないことに気付いている。つまり、フレームから伸びているステーの形状が僅かに異なる、ということなのだ。 それでもなんとかして取り付けるための試行錯誤を、始めてみたい。ただしW3-A改(ヘン)を組んだときもそうしたように、切った貼ったはご法度だ。2台分のシルクロードの部品について、切る削る溶接するといった行為はやらないことにしたい。
こうした制約を取り外して良いなら、なんだって出来る。なんだって出来るけれど、いわゆるチョッパーってやつは、わたしあんまり好きではない。スワップは良いがチョップはダメだ。ということは逆に、CBあるいはGBの部品については、かなり無茶しても良いということでもあるのだよ。やそまか・ふー。
左ステップ側は、たぶんそれほど難しくない。シルクロードとCBそれぞれのフレームから延びるステーのボルトを調べたところ、間隔がほぼ一致しているから。
やっぱり問題は右だ。ブレーキ用のスリーブがネックだ。CBのステップ・プレートをそのまま使うと言い張るのなら、シルクロードのフレームを切除しない限り、ブレーキアームが動作しないことになる。そしてもちろん、それは出来ない。
ではそれならばと、シルクロードのブレーキペダルを再度組み付けてみた。CBのステッププレートとシルクロードのブレーキペダルの共存、という場合の検証に入った。本来のスリーブをグラインダなどで除去するなら、CBのプレートも使えそうだし、ブレーキもステップが10センチほど後方に移動したせいで非常に踏みにくいものになるけれど、機構上の問題は無いだろうと判断した。
こうして懸案事項がまたひとつ潰れた。つまり言い換えるならばわたしの場合、その実行を前にして興味は別の場所に移る、ということでもある。
やはり短距離ライダーは、憂鬱なのである。ふう(続く)