叩いて憂鬱

Dec 09,2006/div>

「アイリー君。あんなのに8,000円も突っ込むって言うんだったら・・・・・以下省略」

そんなこんなで(省略しすぎ)わたしは師匠先生のルートにムリをお願いして、部品取り車を身請けすることにした。破格の値段だったが、その価格は、関係各位のご好意と、この車体にかつてあった商談のことなどを考慮して、伏せることにしたい。このコラムを妻が読むことも当然想定に入れて記述しなければならないのは無論のことである。

わたしはささやかなるiBook購入基金を、少しだけ切り崩したのだった。

じつにバブルなことでどうでもよいことだが、前節でわたしが落札できなかったCB250RSは、後日になって、たぶん名前を替えた同一人物の手によって細かく分解され、同じオークションに出ていた。それぞれの部品は新しい値段が付いていた。ざっと合算すると、どうやらあのときの終了価格を10倍したくらいの開始価格で出品しているようだ。そのことに気付いたから、その件も一応書いておくことにしてみた。

さてこの車体だが、もしもオークションでも開始価格がいつも適正なものだとして足し算するなら、ゆうに10万円以上の価値があるだろうと思った。なぜかというと、欠品がまったくないうえに、純正オプションがフル装備だから、なのだ。多少の不具合はあるけど。

それでは必要な部品をこの車体から引き剥がす作業を始めようと思う。書類があるから、部品取りなんて呼ばないほうが良いのかも知れないし、こっちを起こしたほうがシルクロードを直すよりハナシは早い、って気もしないではない。しかしわたしはCB250RSに愛着はないから、あくまでも部品取りとする。余る部品もたくさん出ることだろう。そうなったらそうなったで、必要になるひとたちに部品をプレゼントすればよいというだけのハナシだ。

余談ながらCB250RS-Zにも愛着はない。たとえ、映画「彼のオートバイ、彼女の島」の中で重要な役割を持っていたということを知ったうえでものことだ。だいたい、こいつにしたって、がっちゃんひゅーんだもの。

CB250RSさんを部品に展開するその前に、ぜひやっておきたいことがあった。CB250RSにシルクロードの右ステップを取りつけて、キックが踏めない写真を撮影しておくのだ。これは実に重要な資料になるだろう。

右ステップとその台座にあたるプレートは、スイングアーム・ピボットシャフトに友締めされているので、そのナットを外し、続いて3本のボルトを取った。リアブレーキのロッドも外しておく。 それから部品を無くさないようにするため、シルクロード2号フレームの右ステップをCBに仮止めしておこうとした。あれ?わずかに取り付け穴の距離が違うことが指先に伝わる。まあそこはそれカ・リ・ド・メ。ネジ山を壊さない程度に締めておくことにした。

いちおう組めたところで、スターターペダルを下ろすことを試みてみよう。

位相としてどのくらいかな、キックギアが噛んでだいたい60度くらい、そのあたりで右ステップがキックスタータ・ストッパーに豹変した。

「ほらごらん。エンジンだけポンと積み替えてもうまいことはいかないよ。フタができないお弁当だよ。」

実験は終わった。

かくしてわたしは、これからシルクロードに取り付けるためのステップとキックペダル、それにシリンダーヘッドカバーを手に入れた。手に入れたとたん、興味は消え去って、ストーリーは脱線することになる。わたしの性格上、これは止むを得ない。わたしが「いらんことしい」なのはかねてからご存知のとおりである。

シルクロードとCB250RSは兄弟車だから共通部品だらけだろうと踏んだわたしは、エンジンのことを先送りにして、前輪の足回りを移植できるかどうか考察をはじめてしまった。

シルクロードの前輪は19インチのドラムブレーキだ。かたやCBは18インチのディスクブレーキだということはご存知の通りかと思う。それからフロントサスのインナーチューブ径は33パイで同じ。だから前足の差し換え、ポン付けはもちろん可能だろうと、以前から踏んでいた。

CBの前輪を外しながら思った。

「たしかハワイ大王が日本を脱出したときの置き土産セットの中に、5穴のディスクローターがあったぞ。」

最近わりと片付いているエルシノ庵で、そのブツを発見した。え〜い、入れ替えたれ。

シルクロードにフロントブレーキのディスク化を望むなら、キャリパを取り付けることのできるボトムケースを持ったサスペンションが必要になる。そこで早速CB250RSのものに入れ替えてみた。その印象を述べよう。

「かっこ悪い。」

組んだ直後にそう思った。あくまで個人的な主観によるものだが、性能以前の問題で、これはボツ。その主観っていうのは・・・・それは言えない。

「そうかそうか。それなら、これを試してみようか。」

兄弟車ということで、なんでもかんでも共通部品だらけだろうと、わたしは踏んでいた。そこでインナーチューブはシルクロードの長いものを使い、ボトムケースはキャりパー取り付けステーがあるCB250RSのものを使う。そのうえで、気に入らない黒塗装は剥離してしまうという方針を採用することにした。

万力でバイスしてシートパイプとボトムケースを固定するボルトを外したりなんかして、シルクロードとCB、それぞれのフロントサス左用は、インナーとアウターに分離された。

続いて、その組み合わせを入れ替える作業に移った。

「がびーん。どびーん。はげちゃびーん。」

構造が違う。似ているようだが違う。シルクロードのほうが、何年かCB250RSよりも後のオートバイだから止むを得ないことなのかも知れないが、確かに違う。

ここでわたしは、シルクロードより若干前に販売されていたはずのCB250RS-Zのフロントフォークは、確かセミエアタイプを採用していたことを思い出していた。と同時に、以前Deeeeeep!!!のは〜さんから貰った、Earlsオイルクーラーに付属してきた初期型クラブマンのことについても思い出していた。(そういえば、CB250RS-Z後続モデルの、もういっちょ次発が、うちにあるじゃないか。あれはセミエアタイプなんかじゃあけっしてなかったぞ。)

さっそくエルシノ庵に格納してあったGB250用フロントサスのうち、左側を分解してみる。そしてシルクロードのものと内部形状を比較してみた。

「ビンゴ」(どうしても言い回しが古い)

さっそく組むことにした。ボトムケース自体の長さに若干差があって、GB用は短い。そのぶんフロントサスは、シルクロード本来よりも短くなるのか、いや取り付けは同じだから長さは同じ筈だとか、また性能面についてもいろいろあると思われる。しかしその点の調査は、先送りにしたいと思う。例の得意技だ。

こうしてシャッフルした左側フロントサスペンションを、車体に仮組みしてみる。前輪サイズがひとつ小さいわけだから、前下がり気味に見えるのは当然しかたないことだが、アルミ地肌色のGBボトムケースでこのバランスなら、今の250TRに間違えられることもなかろう。OK!デザインは妥協点に入った。

オイルシール交換とか、右側サスの入れ替えとか、このあたりもまた先送りだがザッツ・オールライト。こうしてシルクロードはCB250RSに現代風味のスパイスを効かせた前足を持つことになった。

このあたりでふと思うことがあった。

「はてさて。この水没シルクロード、エンジンは動くじゃろか?」

エンジンに激安潤滑油を入れ油面を確認した。それからガソリンをタンクに注いだ。ここで気付いた。

「スロットルが固着しているよ〜。」

どこで何がどのように固着しているのか原因を探るべく、キャブを分解することにした。ついでにエアクリーナー一式も取り外す。

固着は海水による塩害ではなくて、古いガソリンの膜がガムになって貼り付くタイプの、極めて一般的な原因のものだったので、ひとまずは安心した。メインジェットは#105、ジェットニードルは5段のうちのまん中でセッティングされていることをついでに知った。

RS-ZとCB250RSはキャブが異なる。(CB250RS-Zはツインキャブだと聞いた。実物を注視したことがないので自信はない)その一方で、シルクロードとCB250RSのキャブは同一タイプだ。サービスマニュアルにもそう書いてあった。それから、いつか記述する機会かあるかも知れないことだが、両車には圧縮比と点火時期について仕様の差があるらしい。だから、それぞれ20馬力と25馬力という性能を統べているキャブのセッティングがここまでも異なるのは当然のことなのだろう。

いつもながらの出来心でCBのキャブを使うことにした。というのがトリップカウンタを信用するならば、いちばん酷使されていないのがこいつなんだ、という確信があったからだ。わたしは部品取り車体から持ってきたCB250RSのキャブを清掃した。

#112番のメインジェットにクリップは下から2段目でセットされてあった。それからシルクロードのキャブには、メインジェットに樹脂製のジェットホルダーなるものが存在していたが、こちらには存在していなかった。

わたしはもう一度エルシノ庵に行って、ハワイ大王の亡命置き土産セットを詰めた箱から、靴・・・・じゃなくってK&Nのエア・フィルタを取り出した。

これを貰ったころには、コレをわたしにどうしろと言うのが、などと思ったことについては内緒にしておくことにしよう。口径がシルクロードに適合するんだろうなあと、なんとなく気付いていたけれど、ついに取り付けてしまうことになるとはわたしも変わったもんだ。

吸気系をせっかくここまでやったのなら、ものはついでに次なる現物合わせも試みてみたいと思った。かつてEarlsオイルクーラーに付属してきた初期型クラブマンには、ウェリントン社のアルミシールが貼ってあるメガホン型のスーパートラップも付属してあったが、シルクロードに取り付けは可能かなどうかな。。。。。

シルクロード2号を分解保管しようと作業したときに、シルクロードのエキパイにこのスーパートラップを差し込むことができるかどうか、という部品単体でのチェックはすでに終えていたが、車体に取り付けようとするとどうなるか、の実験をついに敢行するときが来たのだ。

やはり右のリアサスに、サイレンサそのものが接触干渉した。それからメインスタンドのストッパーだった、と思われる部位が、ホイルの回転に干渉する。ステーは新しく作らないといけないだろう。こうした三つの些細な問題はあるものの、どうしようもない不都合があるというわけでもない。セットはできそうだ。

「幻のハンマー陰の打〜。(釘師サブやん©牛次郎&ビッグ錠)」

叩く叩く。スーパートラップを取り付けるためには、サスペンション可動部からの逃げを作らないといけない。このハンマーに幼少時に受けたカルチャーショックのすべてを込めて叩く。歯が抜けてゲームコントローラを操作する漫画など、その比ではない。

「幻のハンマー竜の打〜!!」

ところで、ん??スーパートラップってなんだ?

昔からよく見たり聞いたりする文言だけど、それは何を指し示すものなんだろう。ちかごろ本当に記憶の断片が霧散するので、いちど思いついたらできるかぎりすぐ調査するなりメモを残したりすることをこころがけている。このときはハンマーの手を止めて、ウエブの波に向かった。

大勢の方々のナレッジを拝見した。なるほど。どうやら商品名みたいだな。(間違っていたら訂正します)それなら良し。

あの有名な勘違いみたいに、スーパートラップ社のとある製品だとか、特定の車名に使われていたものなどではないことがわかった。構造のことなんかはそっちのけで、名前の定義を知ったわたしは充分に満足して、再びハンマーを手にした。

要するに、複雑共鳴式みたいなもんですよね。とミヅホ社のキャブトン号のオーナーさんに少し気を使ったりなんかしながら、作業は進む。

メインスタンドのストッパーは、グラインダーで切断した。ステーはそこいらに落ちていた汎用プレートでカ・リ・ド・メ。

いつものテスト用タンクにガソリンを注いだ。それから、本日一連の作業を始めた時からこんなこともあろうかとチャージしていた、びんびんに充電できているバッテリを、シルクロードに接続した。この車体のセルは健全そのもので、がっちゃんひゅーん状態にはまず殆ど陥らない。その自信はある。

メインスイッチをオンにして、スタータ・ボタンを押した。

がっちゃん うきききききき

シルクロード一号は、激しい吸気音と烈しい排気音で、4年ぶりに覚醒した。

かわいそうに。

ともかく動くシルクロード一号のエンジンは、実働スペアエンジンとなる予定。あくまでも二号エンジンがベースの、セル&キック併用エンジンに積み替えることは、かねてから宣言してあるとおりだ。

しかしうるさい。スーパートラップってこんなに音がでかいのか? エキパイがダウンマフラーじゃないぶん、サイレンサが上にあって余計に音が大きく感じることもあるのかも知れない。きっとグウンマフラーってやつだな・・・・・・・・・

駄洒落は冴えないしセッティングが出せるかどうかも分からない。やはり短距離ライダーは憂鬱なのである。ふう(続く)

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